最適化ギターの製作

トポロジー最適化ギター

今回の事例では、ギターを最適化&製作した事例をご紹介します。

上記の画像は、レンダリングではなく実際の製品をプロのカメラマンに撮影していただいた画像です。なんと、販売しています。株式会社ユージン様との協業で生まれた、Manaギターです。(https://ujin-net.com/mana/)Instagramでいろいろな画像を見ることができるのでぜひ覗いてみてください。

㈱ユージン様では、U-I.Dというオリジナルギターブランドを展開していて、黒夢の鈴木新さんや、JUDY AND MARRYの恩田快人さんが愛用しています。

 

ギターCAE解析モデル

普段、騒音や共振などによる振動問題を最適化で解いている方法を使用して、楽器の音にも流用できると考えました。解析モデルでは振動応答の他に、いくつかの荷重条件を与えました。常用できる強度を持った、軽量かついい音の出るギターを目指します。

 

ギターのトポロジー最適化
ギターの周波数応答解析

最適化により、周波数応答の波形をコントロールしていきます。

一般に軽量なギターは音質が良くない、と言われがちですが、軽量であっても音質の良いギターを目指しました。弦をはじいた時の振動共振によるピックアップ部分の変位に注目し、できるだけ応答(変位)が小さくなるように努めました。

CAE最適化ギター形状
最適化ギターの振動特性

グラフはピックアップ2か所の振動応答を示しています。

黒線はソリッドボディのギターで、赤が最適化後のギターです。ピークの応答を低減し、できるだけフラットな特性に仕上がりました。

ギターの音響解析

音響解析も実施し、ある程度自信が持てたことで製作に入ります。楽器の音は様々な要素が関わっているため非常に複雑であり、作ってみないとわからないというのが本音でした。

㈱ユージン様では、ギター製作のためにストックしている数十年寝かせた良質なハードメープル材が待っています。言うまでもなく驚くほど高価な材料です・・・。下の画像は、初試作に使用された実際の材料です。

ギター用木材

㈱ユージン様では様々な材料をストックしていて、最適化ギターに合うような杢目から候補を選んでいただきました。この木材からNC加工でギターを製作していきます。金属や樹脂よりも反りが強く出るなど、木材ならではの難しさがあるようで、加工は難しいそうです。

CAE最適化ギター製作

関係者全員、出来上がってみるまで不安だったと思います。出来上がったギターを実際に演奏したギタリストたちの感想は、「レスポンスがいい」「音がきれい」「軽いので疲れない」など、ネガティブな印象は無くポジティブな感想ばかりでした。

ただ、どうしても主観的な感想になってしまうため、なんと株式会社河合楽器製作所様で音響評価を受けることになりました。音響評価を実施することで、最適化ギターの特性を明らかにします。

㈱河合楽器製作所様からは以下のように評価を受けました。評価は、同時に評価を受けた他の3種類のギターとの相対比較です。(安物ではありませんよ)

  • オーバーオールレベル(バンドレベルのエネルギー和)の最大値が大きい
  • 低温から高音までボディの鳴りが良く、振動が安定している
  • 高次倍音が良く出るキャラクターである
  • 音の立ち上がりについてはデータ上は明確な差が無いが、体感的に早く感じられるのは、ボディの鳴り感と倍音構成が起因していると考えられる

上記のように評価を受けました。とても詳細なデータをたくさんいただきましたが、その一部分が以下です。

最適化ギターの音響評価

サウンドメッセに出展したため、Youtube・Instagram・Xなど各種SNSで見ることができ、ギターマガジン2025年6月号にも掲載されています。ぜひご覧ください。

 

今回は、最適化による振動特性制御を最大限に利用した楽器「Manaギター」の事例を紹介しました。弊社ではまだ誰も取り組んだことのない領域での研究開発、それに付随する試作から評価まで一貫して受託することができます。受託開発だけでなく、研究パートナーとしてもぜひご検討ください。