頭部傷害解析(HIC)

HIC解析モデル

今回の事例ではUNR127に基づいた、歩行者頭部保護性能試験の解析をご紹介します。

頭部障害値は一般にHIC(Head Injury Criterion)と呼ばれ、以後HICと記載します。HICには歩行者保護以外にも内装への衝突もあります。

他の衝突試験と同様に、認証で必要なUNRやFMVSSだけではなくEuroNCAPやJNCAP等のアセスメントでも評価されます。自動車が歩行者を撥ねた際、バンパーで歩行者脚部を跳ね上げ、ボンネットで歩行者を受け止めるようになっていますが、ボンネットやフロントウィンドウ、Aピラーがあまりに硬いと致命的な傷害を負う危険性があるためです。

歩行者頭部保護性能試験

上記は、国土交通省のwebサイト(https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/02assessment/car_h18/test_head.html)から引用した画像です。(H18年なのでだいぶ古いですね)様々な部位でHIC値を確認して評価されます。余談ですが、各国法規・各団体アセスメントでそれぞれ評価位置やレーティング基準が違うのでとても大変です。

 

HICのCAE解析モデル

本来、ボンネット下の構造体が必要です。ボンネットと内部構造の隙間・ボンネットヒンジの剛性など、様々な要素が関わっているためです。

今回はただぶつけるだけなので、ボンネット単体の一部を完全拘束してぶつけてみます。もちろん、実車とは全く違う結果になることはご了承ください。

 

 

HIC解析結果
HIC値CAE結果

HIC値を見てみると・・・3850!!!!!  HIC<1000であればAIS(Abbreviated Injury Scale)がレベル4程度となり、重篤な傷害発生率が20%以下と言われていますがはるかに超えてしまいました。ボンネットの特に硬そうな部分にぶつけたのはもちろんですが、ボンネット裏側に設定した拘束条件が主要因となり非常に悪い結果となりました。実車では、フェンダーとの間隙やヒンジの変形でEAするため、もっと良い値になります。

境界条件は精度よく作りこむ必要があることがよくわかる結果となりました。

自動車の衝突安全性能は日進月歩で向上していますが、衝突後に地面に頭を打った時(二次衝突)は非常に高いHIC値を記録することになります。JAFによる実験結果では時速20kmで電動キックボートが転倒して頭部を地面に打った場合、HIC値は7766.2とのことです。(https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/two-wheeled-vehicle/risk)

事故を起こさない、事故に巻き込まれない努力も必要であることがわかります。

 

キックボート転倒HIC

今回の事例紹介では、構造の剛性・強度だけではなく、相手に与える傷害についてをご紹介しました。

弊社では各国法規・各種アセスメントのCAE解析評価を受託しています。車載オリジナル商品の評価についても受け付けているのでぜひ開発にご活用ください。