CAD/CAE分業の手戻りを解消する「シミュレーション主導設計」実践ガイド

CAE最適化を活用した開発により、開発時間を1/3程度に圧縮できる

本記事のトピック

  • 設計と解析の分業が引き起こす「終わらない手戻り(キャッチボール)」や、「実機試験と合わない解析結果」に対するCAE不信の真因を徹底解説。
  • 事後検証としてのCAE利用から脱却し、精度の高い「正しい物理モデリング」をベースにした開発手法へシフトするためのアプローチを提示。
  • 最適化アルゴリズムを用いて理想の骨格を創出し、「極限の軽量化」「大幅な開発工数削減」を同時に達成する『シミュレーション主導設計』のプロセスを9つの事例と共に公開。

限界を迎える従来型プロセス:CAD/CAE分業の弊害と『過剰品質』の現実

ここでは、弊社GRMに寄せられた中から、「CAEが活用できていないと感じる、よくある事例」を紹介します。高価なツールを導入したにも関わらず、多くの企業が同じような構造的課題に直面し、疲弊していることがわかります。

現場で発生している課題 メカニズムとビジネスへの影響
設計と解析の分業による
「終わらない手戻り」

【真因】組織的・心理的な分断

  • 設計部門と解析部門の距離が遠く、設計初期のCAE活用が定着していない
  • 「設計者が勘や既存モデルとの比較で形状を決め、事後に解析専任者が評価する」という完全分業のプロセス
  • 開発後半でのNG発覚時に修正コストや遅延が連鎖的に増大し、開発リソースを枯渇させる
実機テストとの乖離と
CAEへの不信感

【真因】モデリングの基礎力不足とツールの過信

  • オートメッシュや簡素化された境界条件に依存した「お手軽解析」が原因
  • 板金部品に対する不適切な要素選択や、現実の物理現象と合致しない拘束条件の設定など、誤った前提条件での計算は正確な評価を生み出さない
  • 開発後半の致命的な手戻りを誘発し、CAEそのものへの信頼を低下させる
「過剰な安全率」への妥協と
製品競争力の低下

【真因】試行錯誤による最適設計の限界

  • 短い開発期間の中で、人間の直感と手探りの修正だけで軽量化と高剛性を両立させることは困難
  • NGを避けるために「壊れないよう安全側で設計する」という妥協案に逃げる結果となる
  • 材料コストの増大や重量増(過剰品質)を招き、市場における製品競争力を自ら削ぐ結果となる
CAEを「事後検証」に留める
ポテンシャルロス

【真因】「試作品評価の代用」という旧来の発想

  • CAEを設計完了後の「検図(最終テスト)」程度にしか活用できていない状態
  • 「人間が考えた形状をシステムでテストする」という旧来の発想から抜け出せていない
  • 力学的条件から「理想の骨格をソフトウェアに創出させる」というCAE本来の絶大なポテンシャルを活かしきれていない、極めて大きな機会損失

【コラム】CAD/CAEの完全分業は「悪」なのか?

現在の開発環境では、CADによる設計とCAEによる解析評価が組織的に完全に分かれていることが多いです。「分業制が悪」なのではなく、「距離が離れすぎている」ということが問題の本質です。分業制には、以下のような明確なメリットとデメリットが存在します。

分業制のメリット

  • CAEの専門性が高くなり、非常に高度な現象を取り扱えるようになる。
  • 設計担当者は周辺部品との擦り合わせ、コスト低減や品質向上などに集中できる。
  • 分業とすることで、客観的(第三者目線的)に設計の良否を判断できる。

分業制のデメリット

  • CAE担当者は設計のことがよくわからず、評価の合否のみしか伝えられない。
  • 設計担当者は机上計算では不可能な事象を延々と悩んでいる。
  • 分業とすることで、開発中にCAE評価が気軽に使えない。

我々GRMが提案する「シミュレーション主導設計」とは、この高度な専門性というメリットを活かしつつ、両者の間に横たわる「壁」を『設計と解析が初期から伴走するプロセス』によって破壊するアプローチなのです。

 

精度なきCAEからの脱却:手戻りを無くす「シミュレーション主導」のアプローチ

ここでは、前章で指摘した課題に対する、GRMが実践する「シミュレーション主導の開発」による対策を紹介します。
弊社顧客の中で、「短時間開発に成功していて、設計力が高い!」と感じるようなお客様は、「設計者=CAEもCADも両方自分でやる」ということが多いです。

前章で挙げた「現場を崩壊させる手戻り地獄」。これらは決してツールのせいではなく、運用とプロセスの問題です。
我々GRMが実践する「CAE主導の開発」では、これらの絶望的な課題を以下のアプローチで完全に破壊します。

現場の課題と真因 GRMの「CAE主導開発」による解決策
設計と解析の分業による
「終わらない手戻り」
【真因】組織的・心理的な分断

開発初期からCAE最適化を実施するフロントローディング

  • 設計者がアイデアレベルの設計でCAEを活用できる環境づくりを行います。
  • トポロジー最適化などを活用し、設計上流で構造の「アタリ」をつけます。
  • 設計段階から解析専門家が伴走することで、手戻りを防止し開発期間を大幅に短縮します。
実機テストとの乖離と
CAEへの不信感
【真因】モデリングの基礎力不足とツールの過信

プロによる「実機と合う」モデリングの徹底

  • 非線形要素(接触・大変形)や正しい前提条件(境界条件/拘束条件/荷重条件)を組み込んだ、現実に即した高精度なCAE解析を実施します。
  • 開発初期から実機試験と高精度に一致するCAE環境を構築し、開発後半の致命的な手戻りを無くします。
「過剰な安全率」への妥協と
製品競争力の低下
【真因】試行錯誤による最適設計の限界

ソフトウェアによる極限の最適化(軽量化・高剛性)

  • トポロジー・寸法・形状最適化などを駆使し、人間の直感では不可能な最適解を自動算出し、開発初期の時点で「重要となる要素」を特定します。
  • 過剰な安全率を削ぎ落とし、材料コスト削減と圧倒的な軽量化を実現します。
CAEを「事後検証」に留める
ポテンシャルロス
【真因】「試作品評価の代用」という旧来の発想

CAEを「新たな形状を創出するツール」へシフト

  • 事後検証ではなく、力学的な条件から「最適な骨格(ロードパス)」を導き出すアプローチへ転換します。
  • 開発初期から正しい前提条件でCAE最適化を行い、手戻り工数を無くし、評価回数を減らし、試作回数を大幅に削減することが可能になります。
GRMが提唱する「シミュレーション主導の開発」の本質とは、CAE解析部署と設計部署の融合にある
GRMが提唱する「シミュレーション主導の開発」の本質とは、CAE解析部署と設計部署の融合にある
 

実プロジェクトで見るCAE・最適化の効果

それでは、実際の事例を交えながら、我々GRMが提唱する「シミュレーション主導の開発」の実践例を紹介します。事例集へのリンクとなるため、ぜひ事例集一覧も確認していただき、現在の困りごとに対する解決案を探してみてください。

活用分野 事例イメージ(クリックで詳細へ) 概要
<構造>
  • 設計変更
  • 簡易モデルからの設計
  • 既存モデルからの設計
RDM最適化事例 RDM最適化事例
  • 既存設計や、最小限の搭載設計モデルからの設計事例。
  • 要求仕様を満足させる「補強」を最適化により導出しながら設計する設計改善方法。
事例を見る
<構造・座屈>
  • 座屈問題の考慮
円錐殻の座屈問題最適化 円錐殻の座屈問題最適化
  • 強度/剛性だけでなく、面の座屈を考慮した設計事例。
  • 手作業では安全側での設計とする以外に手立てがない現象に、最適化を導入することで設計工数削減と軽量化を実現。
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<構造・衝突>
  • 衝突要件の考慮
バッテリーフレームの衝突最適化 バッテリーフレームの衝突最適化
  • 衝突のような動的条件を考慮した構造設計の事例。
  • ボディ開発の際に最重要となる衝突要件(EA量、侵入量、最大荷重)を考慮したCAE最適化を実施し、軽量なボディを短時間で開発する。
事例を見る
<空力・熱>
  • エアロダイナミクス
  • 放熱性能
FSI(流体構造連成)解析 FSI(流体構造連成)解析①
  • ブレーキローターを題材に、冷却風流路や熱容量による放熱をシミュレーションした事例。
  • 最適化を使用して熱応力の低減による寿命向上や、放熱性向上にも言及。
事例を見る
<構造設計>
  • CFRP(複合材)
  • 材料非線形性
  • 非線形接触
FIA Standard 8855-2021適合シート FIA Standard 8855-2021適合シート
  • 手作業では安全側での設計とする以外に手立てがないCFRP設計を、CAE積層最適化により短時間で設計する事例。
  • 材料の非線形性まで考慮したEA量のコントロールも最適化により達成させる。
事例を見る
<構造設計>
  • 同一デザイン、異サイズの設計
サイズ違い同一形状のトポロジー最適化 サイズ違い同一形状のトポロジー最適化
  • ホイールを題材に、同一デザインだが大きさの異なるものをまとめて最適化する事例。
  • サイズごとに設計⇔CAE評価を繰り返し、サイズによって別デザインになりがちな製品設計に対する解決策。
事例を見る
<空力・構造>
  • エアロダイナミクス
  • 強度/剛性
  • 相反する条件
CFRP製フレキシブルウィング開発 CFRP製フレキシブルウィング開発
  • F1で実際に使用されている技術の紹介。
  • 相反する性能要求(空力と剛性)を、CAE最適化により極限でバランスさせる高度な設計事例。
事例を見る
<構造設計>
  • 振動/騒音(NVH)
ギターのトポロジー最適化 ギターのトポロジー最適化
  • NVH(振動・騒音)低減のために使用していた技術を利用した、エレキギターの音響性能最適化事例。
  • 楽器メーカーによる評価の結果、高音質であることが証明されたユニークな事例。
事例を見る
<構造設計>
  • 傷害値低減
ボンネットの最適化(HIC:頭部傷害値) ボンネットの最適化(HIC:頭部傷害値)
  • ボンネットを題材にした、HIC値(頭部傷害値)低減を達成する最適化事例。
  • 歩行者保護性能と軽量化を同時に成立させるためのアプローチ。
事例を見る


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その解析課題、GRMが解決します。

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  ※技術のご相談は各事例モデルの解析担当者に対応させます。

この記事の監修・執筆チーム

GRM Consulting株式会社 解析エンジニアリング部

モータースポーツ最高峰のF1から量産車開発まで、20年以上にわたり構造設計・衝突・振動・流体解析に携わるスペシャリスト集団。 従来の開発プロセスに限界を感じ、「CAE評価をしながら設計していく」というスタイルで仕事の質を向上させることに成功。 常に設計者が監修することで、単なるシミュレーション結果の提示に留まらず、設計者目線での改善案を提案します。

  • 主要ツール:LS-DYNA, Abaqus, Genesis, Nastran, OptiAssist, Simcenter 3D
  • 専門領域:構造最適化、衝撃エネルギー吸収体最適化、CFRP複合材解析、衝突解析、CFD解析