RDM最適化事例① トポロジー最適化の応用

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ATVのフレームをRDMにてトポロジー最適化したもの

本事例のトピック

  • 従来の「スクラッチ(ゼロベース)からのトポロジー最適化」における設計成立性の課題を解決する、GRM独自の最適化手法「RDM(Reinforcement Derivation Method:補強導出法)」の解説と活用メリット
  • 既存の設計モデル(ベース形状)に対し、補強用の設計空間を重ね合わせてトポロジー最適化を行うことで、目標性能を満足するために「どこに・どのような補強が必要か」をピンポイントで導出可能
  • 本機能はGRM製ツール「OptiAssistシリーズ/GRM Design Toolkit」等に含まれるオリジナル機能であり、設計フェーズを問わず適用できるため、弊社ユーザーにおける導入率は100%を誇る実務直結型のソリューション

【トポロジー最適化を製品開発で活用できないこと、多くないでしょうか?】

一般的なトポロジー最適化が抱える「実務の壁」

理論的に「最も効率の良い形状」を導き出すトポロジー最適化ですが、実際の製品開発フローに組み込もうとすると、多くのエンジニアが以下の課題に直面します。

  • 結果形状の「解釈」と「再モデリング」の手間:
    計算結果は有機的で複雑なメッシュ形状(STL等)で出力されるため、それをCADデータ(NURBS/B-Rep)として書き直す作業に膨大な工数がかかります。
  • 製造要件との不整合:
    「計算上は最強」でも、金型要件(抜き勾配)や加工コストを無視した形状になりがちで、結局量産設計に落とし込む際に性能が低下してしまうことがあります。
  • 「スクラッチ(ゼロベース)」の非現実性:
    実際の設計変更の多くは「既存部品の流用・改良」ですが、一般的なトポロジー最適化は設計空間を一から計算するため、既存の設計資産(意匠やインターフェース)を活かしにくいという難点があります。
自動車のボディをトポロジー最適化した結果。板金形状にならないため非常に難しい設計となる。
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図1:自動車のボディ(BIW)をトポロジー最適化した結果
板金形状ではない有機的な塊で出力されるため、板金構造で設計するのは困難を極める。シアパネルという概念が存在しない・・・。

上図が自動車のBIWを丸ごとトポロジー最適化した例です。設計者からすると狂気の沙汰としか思えない結果であり、「これを参考にしてボディを設計してね」なんて絶対に言われたくありません。このように、トポロジー最適化は設計者泣かせの技術であり、量産品設計に向いているとは言い難い技術でした。また、ほとんどの開発には既存製品や検討モデルが存在するため、ゼロからやり直すの?となりがちです。


【トポロジー最適化を活かすための手法:RDM最適化】

比較項目 一般的なトポロジー最適化
(ゼロベース / スクラッチ)
GRMのRDM最適化
(補強導出法)
結果の解釈と
再モデリング
有機的で複雑な形状が出力されるため、CAD化(B-Rep変換)に膨大な工数とセンスが必要。 「どこを補強すべきか」が明確なロードパスとして導出されるため、設計意図を汲み取りやすくCAD化が容易。
製造要件への対応 計算結果そのままの形状では金型(抜き勾配等)に対応できず、修正すると性能が落ちるジレンマがある。 重要なのは「ロードパス(力の通り道)」であり、形状そのものに拘る必要がないため、製造要件に合わせた形状変更が柔軟に可能。
導入フェーズ
(使いどころ)
設計初期(構想段階)以外では導入が難しく、既存製品の改良には不向き。 ◎ どの段階からでも導入可能!
既存モデルや設計途中のデータに「補強」を追加するアプローチのため、実務フローに即座に組み込める。

では、以下の図のようにトポロジー最適化を使用して、既存製品や試作品に対して『補強すべき部分』が簡単に見えたらどうでしょうか?

トポロジー最適化でもRDMを使用することでボディを補強するためのアイデアが簡単に理解できる
図2:既存ボディ(BIW)をRDM手法でトポロジー最適化した結果
既存構造に対して、「追加すべき補強」「新しいロードパス」が作成されるため、改善点が一目でまるわかり。

上図のトポロジー最適化結果では、既存製品(ボディシェル)に対して、新しい要求性能を満足させるために補強すべき部分がトポロジー最適化により補強されています。ロードパスを改善すべき部分や、接合剛性が低い部分が明確化され、どこをどのように設計変更すべきかが簡単に理解できるようになります。この最適化手法をGRMではReinforcement Derivation Method最適化(RDM®最適化)と呼んでいます。


【ATVのフレームを使用したRDM最適化事例】

ここからは、ATVのフレームを使用してRDM最適化による製品開発の流れを見てみましょう。

ATVフレームのCAE解析結果
図3:ATVフレーム(最適化前)のCAE解析結果
シャシ/ドラトレコンポーネント搭載のパッケージングしか考えていないフレームのため、剛性および強度は目標を全く満足しない華奢なフレーム。

まずはベースラインとして用意された、必要最小限の構成で設計されたフレームを用意します。パッケージング上必要な搭載部品が載せられるだけの華奢なフレームです。

設計者は強度・剛性を気にしなくていいため非常に少ない工数で3Dデータ化することができます。

荷重条件は路面入力5条件+固有値解析の合計6条件としました。


【RDM手法によるトポロジー最適化】

RDMによる最適化設定方法。ほとんどが自動なので手間が少ない。
図4:RDMによるトポロジー最適化設定方法
ほとんど自動で設計空間作成やベースモデルとの接合が行われるため手間が少ない。接合方法やトポロジー最適化設計要素に秘密あり。

早速、RDM最適化のための設計空間を作成します。RDMで補強したいサブアセンブリを表示し、RDM設計空間が自動的に作成されます。設計空間を作成する方法はいくつかありますが、今回は搭載部品や可動部を避けるだけのシンプルなモデルにしています。設計空間と既存製品メッシュの接合や、設計空間に与える材料プロパティにはちょっとしたノウハウがあり、BIWのような大規模なものからダイカスト製品まで様々な構造体に対応しています。


フレームのRDMによるトポロジー最適化結果。弱い部分が可視化され、補強が必要な部分が理解できる
図5:RDMによるフレームのトポロジー最適化結果
ベース設計から弱い部分が可視化され、補強が必要な部分が理解できる。

こちらがRDM最適化結果となります。今回は質量を制限して、その中で最大の剛性になるように最適化しています。

その他にも、目標性能となる剛性を満足させる最軽量の補強、など色々な指定をすることができます。

フレームRDM最適化結果からのCAE確認解析。ベースモデルから剛性が30%以上向上し、質量は5%しか増加していない。
図6-1:RDM最適化後のCAE確認解析結果
ベースモデルから剛性大きく向上していることがわかる。固有値も大幅に向上した。
最適化前後の性能比較表。RDM手法トポロジー最適化により、ベースモデルから剛性が30%以上向上し、質量は5%しか増加していない。
図6-2:最適化前後の性能比較表
RDM手法トポロジー最適化により、ベースモデルから剛性値/固有値が30%以上向上し、質量は5%しか増加していない。

RDM最適化後モデルでは、少ない質量アップで剛性を大きくアップできたことがわかります。

以下の図では、同様のモデルを使用して、サブアセンブリごとにRDM最適化を適用しました。メインフレーム、FRアッパーアーム、FRロアアーム、RRアームを同時に最適化しています。

RDM手法を使用したトポロジー最適化結果のレビュー
図7-1:RDM手法を使用したトポロジー最適化結果のレビュー
サブアセンブリごとに分けてRDM手法トポロジー最適化をした例。補強形状がわかりやすい。
トポロジー最適化後の設計反映方法
図7-2:トポロジー最適化後の設計反映方法
RDM手法トポロジー最適化後の具体的な設計反映。見たままに、製造可能な形状を3Dモデリングすればいいだけなので簡単。

RDM最適化により、補強すべき部分(弱い部分)が明らかになっているため、最適化結果に合わせて設計変更します。上記は一例で、製造要件を満足しながらロードパスを改善させていきます。この時、最適化結果はあくまで「ロードパスや接合剛性を改善している」だけなので、最適化後の形状に拘る必要はありません。

また、設計変更時には強度を考慮した板厚は不要で、理想的な形状を追加すればOKです。なぜなら、この後に板厚最適化や形状最適化をすればいいからです。

RDM最適化により、トポロジー最適化を活用して開発日程を大きく短縮することができるようになりました。RDM最適化が標準の開発手順となっているお客様もいて、弊社受託開発でも日常的に使用されています。


【ダイカスト製品へのRDM手法トポロジー最適化の例】

アルミダイカスト製品との相性も良く、ミニマム設計したシンプルなダイカスト形状にRDM最適化を使用すれば、肉厚が必要な部位やリブの配置が簡単に設計することができるようになります。

ダイキャスト製品_ラジエターサポートのRDM手法トポロジー最適化
図8-1:RDM手法トポロジー最適化を使用したダイカスト製ラジエターサポートの設計
スペース上必要な外形に対して必要なリブが出力されるため、最適化結果どおりにリブを作成すればOK。リブ最大厚みなどコントロール可。
ダイキャスト製ハウジングのトポロジー最適化
図8-2:RDM手法を使用したダイカスト製ハウジングのトポロジー最適化
ミニマム形状に対してRDM最適化結果で補強したい位置にリブを追加するだけ。リブ追加⇒RDM最適化を3サイクルで設計完了。

図8は実際のお客様事例で、手作業でのリブ形状設計に対して、反復サイクルが1/7~1/10に削減されたと報告されています。

今回は、弊社特有の技術としてRDM最適化をご紹介しました。これ以外にも紹介できるRDM最適化事例がいくつもあるので、様々なサンプルをご紹介予定です。

弊社ではCAE解析による評価だけではなく、設計も受託しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

その解析課題、GRMが解決します。

本記事でご紹介した「トポロジー最適化技術の応用」「設計時間短縮ツール」を、御社の製品開発に適用しませんか?
「現状のモデルを見てほしい」「テスト解析を依頼したい」など、技術的なご相談からでも大歓迎です。

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この記事の監修・執筆チーム

GRM Consulting株式会社 解析エンジニアリング部

モータースポーツ最高峰のF1から量産車開発まで、20年以上にわたり構造設計・衝突・振動・流体解析に携わるスペシャリスト集団。 単なるシミュレーション結果の提示に留まらず、本記事のような短時間での設計改善を得意とし、性能目標の達成から軽量化まで様々な改善を手掛けています。

  • 主要ツール:LS-DYNA, Abaqus, Genesis, Nastran, OptiAssist, Simcenter 3D
  • 専門領域:構造最適化、衝撃エネルギー吸収体最適化、CFRP複合材解析、衝突解析、CFD解析