
今回の事例では、ホイールのトポロジー最適化でも使用した、クローニング制約について紹介します。
クローニング制約とは、最適化対象とする部品と同形状(同パターン)で別の部品も最適化される制約条件です。意味が分からないと思うので、以下に図示しますね。

上記がクローニング制約の概念です。以下のような状況で使用できる便利な制約条件です。
- 可動部を持ったアセンブリ構造品で、姿勢違いが発生する
- 連続したパターンの構造体
- 対称形状の部品がある(回転、平面対称)
1.は具体的に、ロボットアーム・ショベルカーやクレーンのブーム(アーム)・サスペンションアームなどの、関節がある製品です。製品が可動することで、姿勢によって受ける荷重が変わってしまう場合に有効です。
2.は具体的に、橋梁の柱など、大きさが少しずつ違う類似形状がパターンとして並ぶ構造体です。クローニング制約ではスケール指定ができるので、大きさ違いも問題ありません。
3.は具体的に、構造体の構成部品にある共通/対称形状のブラケット等です。別事例でのホイールでは、スポークをパターン化するためにクローニング制約を使用しています。
上図のように荷重条件を与えました。いずれもアーム先端に500Nを入力します。もちろん、姿勢毎に全く違う荷重条件を与えても大丈夫です。
実際に、ロボットアームやクレーンの最適化では、姿勢毎に違う荷重を入力して計算します。

上記画像が、クローニング制約を使用した最適化結果です。1a~c、2a~c、3a~cがそれぞれ同一形状になっています。
クローニング制約を使用しなかった場合との違いを以下の画像で比較してみましょう。

上図からわかるように、クローニング制約有りと無しでは全く違う結果になります。クローニング制約無しの結果から設計しろと言われたら発狂してしまいそうです。
可動部のある、姿勢違いの製品設計では常に「姿勢によって受ける荷重が変化する」ということを念頭に設計するため、最適化する際もそれを再現してあげる必要があります。
クローニング制約を使用しない場合は、面倒ですがアーム単体で各姿勢での入力荷重を使用することで最適化を実行することが可能です。ただし、アセンブリ全体として計算しなければならない条件に対応することができません。(例:アセンブリ状態で固有値の要求がある、クレーン全体が風荷重を受ける、など)
クローニング制約を使用することで、モデリング工数の削減はもちろん、アセンブリ状態必須となる条件も同時に最適化できるため、ぜひ活用してみてください。
その他、難しい条件での最適化事例などリクエストをいただければ(いつか)応えるので、ぜひお気軽にご連絡ください。