今回の事例では、弊社が得意としている複合材、CFRPについてご紹介します。
CFRPを用いた設計事例については、CFRP製チェアやCFRP製シート、フロントウィングの事例をご覧ください。
CFRPのような異方性材料は、NastranやGenesisのような線形静解析ソルバーでは異方性材料カードのMAT8を使用することが一般的です。ただし線形静解析ソルバーでは、非線形領域となる破壊まで確認することができないため、LS-DynaやAbaqusなどの非線形解析ソルバーを使用することになります。
非線形解析ソルバーのMATカードは非常に複雑で、多くのパラメーターが存在しています。また、CFRPなどの異方性積層材に使用できるMATカードの種類も豊富にあり、CAEで評価したい内容に合わせてMATカードの種類を選択することが可能です。
今回は、LS-Dyna用のMAT058 : MAT_LAMINATED_COMPOSITE_FABRICを紹介します。早速MAT058のプロパティを見てみましょう。
一般的な非線形材料モデルであるMAT024と比較してとてもたくさんのパラメーターが設定可能です。これらのパラメーターを同定することで、精度の良い解析結果を得ることができます。
【MAT058作成の流れ】
- 材料試験の実施
各方向の引張試験、ILSSなどの基本的な物性値を取得するための試験。 - LS-DynaでのMATカードの同定①
1の試験結果とマッチするようにパラメーターを同定。 - 矩形断面やハット断面の梁の3点(4点)曲げ試験
より製品状態に近い状態を確認。クラッシュボックスでは圧壊試験も実施。 - LS-DynaでのMATカードの同定②
3の試験結果とマッチするようにパラメーターを同定。
今回の事例は、上記の『2.LS-DynaでのMATカードの同定①』が対象です。
試験状態と同じ状態にしたCAEモデルが上記です。今回はクロス材を使用するため、0°と90°に大きな差はありませんが、UD材では0°と90°に大きな差が発生します。
- Tension 0°:JIS K 7164 / JIS K 7165、ISO527-5等の引張強度試験
- Tension 45°:JIS K 7019 / JIS K 7079、ISO14129等のIPS(In-Plain Shear Strength 面内せん断)試験
- Tension 90°:JIS K 7164 / JIS K 7165、ISO527-5等の引張強度試験
- ILSS:JIS K 7057 / JIS K 7078、ISO14130等のILSS(Interlaminar Shear Strength 層間せん断)試験
この他にも、曲げや圧縮などの試験も行うことがありますが、今回は代表的なものに絞りました。上記は同定したパラメーターを使用して実施したLS-Dynaによる解析結果のアニメーションです。見た目が地味なのであまり面白くありませんね・・・。実際に試験結果とグラフで比較してみましょう。
試験はN=*と複数回の試験を実施しているのですが、そのうち一つの結果だけ載せています。
実際のMATカード作成業務では、この後に矩形断面での試験や圧壊試験も同定します。
これらの同定を実施した材料カードを使用することで、非常に精度の高い解析結果を得ることができるようになります。
↓ RCSのクラッシュ試験とCAE結果を重ねて表示
弊社では、CFRPをはじめとした複合材製品の開発サポートを請け負っています。
- 試験片の作成(パートナー企業にて)
- 材料試験の実施(パートナー企業にて)
- MATカードの作成
- MATカード作成方法のCAEトレーニング
- 製品設計
- 試作(パートナー企業にて)
- 製品評価(パートナー企業にて)
GFRP/CFRPなどの複合材製品開発でお困りの際はお気軽にご連絡ください。