x

側面衝突CAE解析

この解析ではCCSA様(https://www.ccsa.gmu.edu/)が無償配布しているフルラップ前突同定済みのMY2015 Camryモデルを使用して側面衝突解析を紹介します。 FMVSS214で定義された条件と台車で解析を実施します。UNR95よりも速く、重い台車が斜め前から衝突する条件です。 なお、サンプルモデルであるため、実車とは異なる結果になることはご了承ください。 FMVSS214では運転席と後席にそれぞれダミーを搭載しますが、このモデルではダミーは搭載しません。もちろん、他の事例にあるようにダミーを搭載して障害値を確認することが可能です。 1368kgの台車が54km/hで静止した車両に衝突します。ドアが大きく変形していますが、室内侵入量は少なく見えます。 台車を非表示にして車両の動きを見てみましょう。   台車を非表示にしてみると、Bピラーとドア内インパクトビームが台車の侵入を抑えていることがわかります。 前後方向の断面を見た様子が以下のアニメーションです。   断面で見てみると、Bピラーの変形をシートが受けていて、左右Bピラー間の距離が縮まらないようになっていることがわかります。バリア侵入量≒Bピラー間距離変化は、乗員の生存空間確保に直結するためとても重要です。 降伏応力が非常に高い材料を使わない限り、厚肉かつ大断面の部材を使用せざるを得ない部分のため、量産車がいかに効率よく設計されているかがよくわかる部分です。 最終的にはエアバックも考慮したダミーの障害値で良否判定をすることがになりますが、開発初期段階ではBピラー間距離に着目して設計することも可能です。 また、車両全体CAEモデルではドアロックが完全ロックした状態での解析となりますが、ドアが開いてしまうと評価NGとなるため設計が難しい衝突条件の一つです。   弊社では自動車メーカーから、各国の法規評価(FMVSS,UNR…)、各国NCAP評価などを受託しています。お気軽にお問い合わせください。 最適化では、ドア内インパクトビーム、Bピラー、フロアクロスメンバー、サイドシルを設計することが可能です。

頭部傷害解析(HIC)

今回の事例ではUNR127に基づいた、歩行者頭部保護性能試験の解析をご紹介します。 頭部障害値は一般にHIC(Head Injury Criterion)と呼ばれ、以後HICと記載します。HICには歩行者保護以外にも内装への衝突もあります。 他の衝突試験と同様に、認証で必要なUNRやFMVSSだけではなくEuroNCAPやJNCAP等のアセスメントでも評価されます。自動車が歩行者を撥ねた際、バンパーで歩行者脚部を跳ね上げ、ボンネットで歩行者を受け止めるようになっていますが、ボンネットやフロントウィンドウ、Aピラーがあまりに硬いと致命的な傷害を負う危険性があるためです。 上記は、国土交通省のwebサイト(https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/02assessment/car_h18/test_head.html)から引用した画像です。(H18年なのでだいぶ古いですね)様々な部位でHIC値を確認して評価されます。余談ですが、各国法規・各団体アセスメントでそれぞれ評価位置やレーティング基準が違うのでとても大変です。   本来、ボンネット下の構造体が必要です。ボンネットと内部構造の隙間・ボンネットヒンジの剛性など、様々な要素が関わっているためです。 今回はただぶつけるだけなので、ボンネット単体の一部を完全拘束してぶつけてみます。もちろん、実車とは全く違う結果になることはご了承ください。     HIC値を見てみると・・・3850!!!!!  HIC<1000であればAIS(Abbreviated Injury Scale)がレベル4程度となり、重篤な傷害発生率が20%以下と言われていますがはるかに超えてしまいました。ボンネットの特に硬そうな部分にぶつけたのはもちろんですが、ボンネット裏側に設定した拘束条件が主要因となり非常に悪い結果となりました。実車では、フェンダーとの間隙やヒンジの変形でEAするため、もっと良い値になります。 境界条件は精度よく作りこむ必要があることがよくわかる結果となりました。 自動車の衝突安全性能は日進月歩で向上していますが、衝突後に地面に頭を打った時(二次衝突)は非常に高いHIC値を記録することになります。JAFによる実験結果では時速20kmで電動キックボートが転倒して頭部を地面に打った場合、HIC値は7766.2(!!!!!)とのことです。(https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/two-wheeled-vehicle/risk) 事故を起こさない、事故に巻き込まれない努力も必要であることがわかります。     […]

ボルト締結CEA解析

今回の事例では、台形ねじを使ったボルト締結を再現したCAEモデルをご紹介します。使用するソルバーはLS-DynaのIMPLICITソルバーです。 使用するモデルは、ソケット(剛体)・ボルト・被締結物・ナットです。ソケット以外はMAT24を使用しています。 構造解析用CAEモデルにボルトプリロードを再現したい場合、*CONTACT_SURFACE_TO_SURFACE_INTERFERENCEやその他の方法で軸力を予め与えておくことがほとんどだと思います。ですが、今回は実際にボルト締結を再現してみます。 「台形ねじは緩みやすいので締結に適さない」と一般的に言われますが、なぜ緩むのか知っていますか? 普通に三角ねじを使用すればいいじゃない、というのは正論ですが、レースの世界では目的達成のために規格寸法ではないものを使用することが頻繁にあります。Google検索等で「Formula1 Wheel nut」と検索してみてください。なんと、ねじ山が2山未満のねじでホイールが固定されているのがわかります。もちろん、三角ねじではなく、台形ねじに近いプロファイルになっています。     ご存じのとおり、ボルト接合ではボルトに発生する軸力によりボルトが弾性変形し、その軸力により強大な摩擦力が発生することで締結構造を保持しています。私は「ねじ締結概論(酒井智次著)」を元にしたエクセルで締結成立性の計算をしています。 驚くことに、机上計算では「台形ねじで締結しても緩まない」という結果になります。(もちろん、大径にしてリード角を小さくしている場合)ぜひ計算してみてください。 ですが先人たちの経験上、緩みやすいことは明らかであり、実際に緩んでしまった原因を調査したいという依頼がありました。     上記のモデルを使用して、ボルト締結をLS-Dynaで再現します。机上計算では約95kNの締結軸力が発生するはずです。 ナット下面を拘束し、ソケットにトルクを与えます。 ですが、以下の解析結果では明らかに机上計算よりも低い軸力(76kN)となっていて、外力に対して軸力不足である結果になりました。 余談ですが、アニメーションの見栄えをよくするために動きを大きくしようと、ボルトを中空にして剛性を低くしましたがほとんど回転せずがっかりしました・・・。     […]

オフセット前面衝突解析(ODB)

この解析ではCCSA様(https://www.ccsa.gmu.edu/)が無償配布している同定済みのMY2015 Camryモデルを使用してODB(オフセットデフォーマブルバリア)衝突を紹介します。 バリアは、LSTCが配布している無料のデフォーマブルバリア(Shell要素版)を使用します。 解析条件はUNR94に則っています。ただし、ダミーは搭載しておらず、質量として搭載されています。   フルラップリジッドバリアを同定したモデルを使用しており、ODBの精度については保証されていないため、実車とは違う結果になっていることをご了承ください。   今回の結果をYouTubeで確認できる結果と比較してみると、車両挙動はとてもよく合致しています。フルラップ衝突をしっかりと同定したモデルのため、ODBでも十分な精度があるように見えます。 オフセット衝突では車両の片側で荷重を受けるため、クラッシュボックス・サイドメンバー・サイドシル・フロアメンバーを堅牢にする必要性があります。しかし、あまりに堅牢に設計してしまうとフルラップ衝突時のエネルギー吸収量が不足し、ダミー障害値が上昇するという背反があるためバランスを取ることが必要です。   弊社では自動車メーカーや設計企業から、各国の法規評価(FMVSS,UNR…)、各国NCAP評価などを受託しています。お気軽にお問い合わせください。

座屈問題のCAE最適化

今回の事例では、座屈問題を最適化する事例を紹介します。 まずは肉厚1mmのパイプを用意しました。入力条件は以下のように、下端を完全拘束、上端はフリーの状態で、上端に圧縮荷重15kNを与えます。 まずはベースラインの解析結果を確認します。 座屈固有値係数:0.71(1.0以下で座屈します) 応力:200.4MPa 最大変位:0.49mm 上記のようになりました。もちろん、応力と変位は「座屈しなかったら」が前提としてあるため、実際に試験を行うと座屈してしまい強度が不足する状態です。     上記のように、座屈考慮有無の2パターンの最適化モデルを用意しました。両方とも板厚の最適化を実施し、結果にどのような差があるかを確認します。   最適化後の板厚は以下のようになりました。 最適化前:1.0mm 最適化後(座屈考慮無し):1.29mm 最適化後(座屈考慮有り):1.88mm まずはパターン1:座屈考慮無しの最適化結果(t1.29)です。 応力も変位も低下していますが、座屈固有値係数が0.92となっており、実際には座屈してしまうことがわかります。      

シートベルトアンカー

今回の事例は、ECE R14で規定されているシートベルトアンカレッジ強度試験をご紹介します。今回もCCSA様(https://www.ccsa.gmu.edu/)が無償配布している同定済みのMY2015 Camryモデルを使用します。 実車とは違う結果になっていることをご了承ください。 シートベルトに関わるデータは配布データに無く、シートベルトアンカー等は剛体要素で作成しています。ベルトのモデルは基本的な設定とし、1D+2Dのベルトを使用しています。肩とバックルの2か所はスリップリングとし、リトラクターとラップアウターは固定されています。 こちらがLS-Dynaによる解析結果です。無事に最大荷重に耐えることができました。ECE R14に規定されている荷重どおりに入力しましたが、まだまだ余裕がありそうな結果になっています。 側面衝突に耐えるように設計されたBピラーは非常に堅牢で、座屈する兆候が全く見られません。万が一の際にしっかりと乗員を拘束することができる様子がこの解析から理解できます。 通常の開発では、塑性ひずみ・ボディブロック移動量・ベルト荷重など様々なチェック項目がありますがここでは割愛します。 弊社では量産車だけでなく、レース車両の安全装置の解析も受託可能です。FIAから認定を受けているため、弊社に委託していただければFIAのホモロゲーションを取得することが可能です。FIAから認証を受けているのはGRM UKのため認証はUKオフィスに委託することになりますが、すでに日本国内で実績があります。 FIAのベルトアンカー強度評価、ロールバー強度評価などでホモロゲーション取得にお困りでしたらぜひお声がけください。

RDM最適化事例①

今回の事例では、トポロジー最適化を製品開発に活かしてみよう。というテーマです。 いきなりですが、トポロジー最適化を製品開発で活用できないこと、多くないでしょうか? こちらはBIWをトポロジー最適化した結果です。この結果を提出したらボディ設計者は発狂すること間違いないでしょう。板金で作ると言っているのにこれを「最適化結果です」と言われたら・・・。 製品開発のほとんどの場合、既存製品や試作品があり、そこから改善していくことが多いと思います。そのため、いきなり完全新規形状になってしまうトポロジー最適化はなかなか活用しづらいなぁというのが本音です。 でも、板厚最適化や形状最適化は、主要なロードパスを改善するほど変化させられないため、基本骨格は今までのノウハウに頼り切り、ということが多い印象です。 では、以下の図のようにトポロジー最適化を使用して、既存製品や試作品に対して『補強すべき部分』が簡単に見えたらどうでしょうか? 上図のトポロジー最適化結果では、既存製品(ボディシェル)に対して、新しい要求性能を満足させるために補強すべき部分がトポロジー最適化により補強されています。ロードパスを改善すべき部分や、接合剛性が低い部分が明確化され、どこをどのように設計変更すべきかが簡単に理解できるようになります。この最適化手法をGRMではReinforcement Derivation Method最適化(RDM®最適化)と呼んでいます。 ここからは、ATVのフレームを使用してRDM最適化による製品開発の流れを見てみましょう。 まずはベースラインとして用意された、必要最小限の構成で設計されたフレームを用意します。パッケージング上必要な搭載部品が載せられるだけの華奢なフレームです。 設計者は強度・剛性を気にしなくていいため非常に少ない工数で3Dデータ化することができます。 荷重条件は路面入力5条件+固有値解析の合計6条件としました。 早速、RDM最適化のための設計空間を作成します。RDMで補強したいサブアセンブリを表示し、RDM設計空間が自動的に作成されます。設計空間を作成する方法はいくつかありますが、今回は搭載部品や可動部を避けるだけのシンプルなモデルにしています。設計空間と既存製品メッシュの接合や、設計空間に与える材料プロパティにはちょっとしたノウハウがあり、BIWのような大規模なものからダイカスト製品まで様々な構造体に対応しています。 こちらがRDM最適化結果となります。今回は質量を制限して、その中で最大の剛性になるように最適化しています。 その他にも、目標性能となる剛性を満足させる最軽量の補強、など色々な指定をすることができます。 RDM最適化後モデルでは、少ない質量アップで剛性を大きくアップできたことがわかります。 以下の図では、同様のモデルを使用して、サブアセンブリごとにRDM最適化を適用しました。メインフレーム、FRアッパーアーム、FRロアアーム、RRアームを同時に最適化しています。 RDM最適化により、補強すべき部分(弱い部分)が明らかになっているため、最適化結果に合わせて設計変更します。上記は一例で、製造要件を満足しながらロードパスを改善させていきます。この時、最適化結果はあくまで「ロードパスや接合剛性を改善している」だけなので、最適化後の形状に拘る必要はありません。 また、設計変更時には強度を考慮した板厚は不要で、理想的な形状を追加すればOKです。なぜなら、この後に板厚最適化や形状最適化をすればいいからです。 […]

クラッシュボックスの最適化

弊社では、Formula1をはじめとした各種レース車両クラッシュストラクチャや、量産車量のクラッシュボックス、バンパーレインフォース、サイドシルなどの最適化を受託開発しています。 今回のクラッシュボックス最適化事例では、どんな方法で開発しているのかを少しだけお見せします。 クラッシュボックスは様々な要求を求められますが、その中でも「適切に衝突エネルギーを吸収する」ことが主目的であり、設計が非常に難しい部品です。 強すぎてもダメ、弱すぎてもダメ、という部品です。 まずはベースラインとなるモデルを用意してみました。バンパーレインフォースとクラッシュボックスは、板厚4mmの7000系のアルミです。(この材料モデルは同定済みのカードです) 非表示にしていますが、質量付きの剛体平面インパクターを初速度50km/hで衝突させています。 一般的にクラッシュボックスの最適化はクラッシュボックス単体で実施しますが、とある都合によりバンパーレインフォース付きの左右対称モデルです。 結果は御覧のとおり、ストロークが不足しているため軸圧縮荷重(ここではSPC Force)が高い印象です。 40mmストロークまではバンパーレインフォースの潰れによる低い軸圧縮荷重、その直後に軸圧縮荷重のスパイクが見られます。これはビード等のイニシエータが無いことに起因しているため、ここではそのあと(60mmストローク以降)の軸圧縮荷重に注目します。 1000kN前後の軸圧縮荷重が見られ、サイドメンバーが先に座屈してしまう可能性があります。(ということにしておきましょう) なお、量産車ではこのように真直ぐ一定の断面が取れなかったり、バンパーレインフォースの都合だったり、周辺部品取付の都合だったりで軸圧縮荷重が乱高下している状態からの最適化になることもあります。 では、ここから、ストロークを増やしつつ・EA量はキープしつつ・荷重を下げつつ・軽量化していきます。 参考として、このベースラインモデルは8コアで13分程度の計算でした。 LS-DynaのモデルをGenesisで計算するためにモデルをインポートします。弊社製のソフトでインポートができます。LS-Dynaの結果をLoadcaseに指定して、Genesisで計算したところです。計算時間は1分程度です。モデルセットアップは5分程度でした。 潰れ切り直後の変形を比較し、全く同じように変形していることが確認できます。(左がLS-Dyna計算結果、右がGenesis計算結果)ここで使用している最適化ソフトは、Genesis+ESL-Dyna(Genesis用非線形課題最適化アドイン)になります。 最適化の設定は、 変形量250mm 押出成形可能であること 板厚は1.5mm~4.0mmまで […]

CFRPチェア製作

今回の事例では、CFRPチェアをコンセプト立案~最適化~設計~製作した、「Slit Chair」の事例をご紹介します。 製作ではサカイ産業株式会社様、コンセプト作成および意匠デザインは未来輪業様にご協力いただきました。   ここで紹介するモデルは残念ながら販売はしていませんが、サカイ産業様に頼み込めば(きっと)製作可能です。   まずは製品コンセプトとして、「CFRPの特性を活かした形状の椅子」というものがあります。そのため、あえて「力学的に間違えている椅子」という意匠にしました。 側面視で見ると片持ち梁になっていて、座面前端でしか体重を支えられないことがわかります。 狙いの性能は、JIS S 1032 オフィス家具-椅子で定められた性能要件です。実際に使用できるように、JIS S 1032では不足していると考えられる意地悪な条件も少し追加しています。 130kg以上の体重の方が座っても壊れない、実使用に耐えうる性能の椅子を開発します。 まずは、ラフなトポメトリー最適化を使用して、積層板厚分布の傾向を調査します。 左側は弊社製のソフトを使用して自動的に任意のパッチサイズに積層を分割したモデルです。このパッチごとに板厚を可変させることができます。傾向調査のためだけなので、分割はラフで十分です。 右側は最適化結果の板厚となり、予想通りの板厚分布を得ることができました。 このラフな板厚分布から、サカイ産業様とプリフォーム形状を相談します。作りやすく、できる限り少ない枚数で積層することを目指します。 次に、仮決めしたプリフォーム形状でもう一度積層を最適化します。 […]

最適化ギターの製作

今回の事例では、ギターを最適化&製作した事例をご紹介します。 上記の画像は、レンダリングではなく実際の製品をプロのカメラマンに撮影していただいた画像です。なんと、販売しています。株式会社ユージン様との協業で生まれた、Manaギターです。(https://ujin-net.com/mana/)Instagramでいろいろな画像を見ることができるのでぜひ覗いてみてください。 ㈱ユージン様では、U-I.Dというオリジナルギターブランドを展開していて、黒夢の鈴木新さんや、JUDY AND MARYの恩田快人さんが愛用しています。   普段、騒音や共振などによる振動問題を最適化で解いている方法を使用して、楽器の音にも流用できると考えました。解析モデルでは振動応答の他に、いくつかの荷重条件を与えました。常用できる強度を持った、軽量かついい音の出るギターを目指します。   最適化により、周波数応答の波形をコントロールしていきます。 一般に軽量なギターは音質が良くない、と言われがちですが、軽量であっても音質の良いギターを目指しました。弦をはじいた時の振動共振によるピックアップ部分の変位に注目し、できるだけ応答(変位)が小さくなるように努めました。 グラフはピックアップ2か所の振動応答を示しています。 黒線はソリッドボディのギターで、赤が最適化後のギターです。ピークの応答を低減し、できるだけフラットな特性に仕上がりました。 音響解析も実施し、ある程度自信が持てたことで製作に入ります。楽器の音は様々な要素が関わっているため非常に複雑であり、作ってみないとわからないというのが本音でした。 ㈱ユージン様では、ギター製作のためにストックしている数十年寝かせた良質なハードメープル材が待っています。言うまでもなく驚くほど高価な材料です・・・。下の画像は、初試作に使用された実際の材料です。 ㈱ユージン様では様々な材料をストックしていて、最適化ギターに合うような杢目から候補を選んでいただきました。この木材からNC加工でギターを製作していきます。金属や樹脂よりも反りが強く出るなど、木材ならではの難しさがあるようで、加工は難しいそうです。 関係者全員、出来上がってみるまで不安だったと思います。出来上がったギターを実際に演奏したギタリストたちの感想は、「レスポンスがいい」「音がきれい」「軽いので疲れない」など、ネガティブな印象は無くポジティブな感想ばかりでした。 ただ、どうしても主観的な感想になってしまうため、なんと株式会社河合楽器製作所様で音響評価を受けることになりました。音響評価を実施することで、最適化ギターの特性を明らかにします。 ㈱河合楽器製作所様からは以下のように評価を受けました。評価は、同時に評価を受けた他の3種類のギターとの相対比較です。(安物ではありませんよ) オーバーオールレベル(バンドレベルのエネルギー和)の最大値が大きい 低温から高音までボディの鳴りが良く、振動が安定している […]