頭部傷害解析(HIC)① ボンネットの衝撃解析

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HICのCAE解析モデル

本事例のトピック

  • 歩行者保護性能評価(JNCAP, Euro NCAP等)において最も重要な指標である頭部傷害基準値(HIC:Head Injury Criterion)の算出および評価シミュレーション事例
  • LS-DYNAを用いたインパクタ(頭部模型)の衝突解析により、衝突時の加速度時刻歴波形を出力し、特定の積分区間におけるHIC値を自動算出
  • ボンネットフードやフロントガラス周辺など、衝突位置ごとの傷害値をヒートマップ(コンター図)で可視化することで、構造上のハードポイント(危険箇所)の特定と対策が可能

今回は衝突解析の受託事例として、UNR127に基づいた、歩行者頭部保護性能試験のCAE解析をご紹介します。

弊社ではOEMから各種アセスメントのCAE評価や、今回紹介する頭部傷害値を改善するためのCAEによる最適化を実施してきました。ここでは単純なCAE解析についてのみの紹介となります。

頭部傷害値は一般にHIC(Head Injury Criterion)と呼ばれ、以後HICと記載します。HICには歩行者保護以外にも内装への衝突もあります。

技術解説:HIC(頭部傷害基準値)の定義

HIC (Head Injury Criterion) とは、衝突時に頭部に生じる合成加速度の時刻歴波形から算出される、脳へのダメージリスクを表す指標です。

HIC = max [ 1 t2 – t1 t1 t2 a(t) dt ]2.5 (t2 – t1)

主な評価基準:

  • 積分区間:最大値をとりうる任意の時刻区間 t_1, t_2 (最大15ms) で計算されます。
  • 閾値(Threshold):一般的に HIC < 1000 であることが求められます(JNCAP/Euro NCAP等)。

単純な最大加速度(Peak G)だけでなく、「どれくらいの強さの衝撃が、どれくらいの時間続いたか」が脳へのダメージに影響するため、CAE解析においては加速度波形の形状そのものをコントロールする(=適切なエネルギー吸収構造を設計する)ことが重要になります。

他の衝突試験と同様に、認証で必要なUNRやFMVSSだけではなくEuroNCAPやJNCAP等のアセスメントでも評価されます。自動車が歩行者を撥ねた際、バンパーで歩行者脚部を跳ね上げ、ボンネットで歩行者を受け止めるようになっていますが、ボンネットやフロントウィンドウ、Aピラーがあまりに硬いと致命的な傷害を負う危険性があるためです。

歩行者頭部保護性能試験 国土交通省のwebサイトより
図1:歩行者頭部保護性能試験 国土交通省のwebサイトより
頭部傷害値を検査されるポイントは多岐に渡り、フェンダーやカウル部分は剛性が高いため特に難しい。

上記は、国土交通省のwebサイト(https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/02assessment/car_h18/test_head.html)から引用した画像です。(H18年なのでだいぶ古いですね)様々な部位でHIC値を確認して評価されます。余談ですが、各国法規・各団体アセスメントでそれぞれ評価位置やレーティング基準が違うのでとても大変です。

HICのCAE解析モデル
図2:HICのCAE解析モデル
紹介のために簡素化したボンネットのHIC検証モデル。拘束部に近いエッジ付近に頭部インパクター衝突させるため、非常に危険。

今回の受託解析事例として使用するモデルはボンネットのみとなりますが、衝撃解析を実施する際は本来、ボンネット下の構造体が必要です。ボンネットと内部構造の隙間・ボンネットヒンジの剛性など、様々な要素が関わっているためです。

今回はただぶつけるだけなので、ボンネット単体の一部を完全拘束してぶつけてみます。もちろん、実車とは全く違う結果になることはご了承ください。

HIC:頭部傷害値解析結果のアニメーション
図3:HIC:頭部傷害値解析結果のアニメーション
高剛性部分への衝突となり、頭部インパクターがあまりボンネットを変形させない。つまり非常に高いHICを記録する。
HIC値CAE結果。HIC値は3850と非常に高い値であり、致命的。
図4:HIC:頭部傷害値解析結果のグラフ
HIC値は3850と非常に高い値であり、致命的。

HIC値を見てみると・・・3850!!!!!  HIC<1000であればAIS(Abbreviated Injury Scale)がレベル4程度(重篤な傷害発生率が20%以下)と言われていますが、はるかに超えてしまいました。ボンネットの特に硬そうな部分にぶつけたのはもちろんですが、ボンネット裏側に設定した拘束条件が主要因となり非常に悪い結果となりました。実車では、フェンダーとの間隙やヒンジの変形でEAするため、もっと良い値になります。

境界条件は精度よく作りこむ必要があることがよくわかる結果となりました。

自動車の衝突安全性能は日進月歩で向上していますが、衝突後に地面に頭を打った時(二次衝突)は非常に高いHIC値を記録することになります。JAFによる実験結果では時速20kmで電動キックボートが転倒して頭部を地面に打った場合、HIC値は7766.2(!!!!!)とのことです。(https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/two-wheeled-vehicle/risk)

事故を起こさない、事故に巻き込まれない努力も必要であることがわかります。

キックボート転倒時のHIC値試験結果
図5:JAFによるキックボート転倒時のHIC値試験結果
ヘルメットなしで20km/hの転倒で、HIC値は7766.2と致命的な値を記録している。ヘルメットは着用しましょう。

今回の事例紹介では、構造の剛性・強度だけではなく、相手に与える傷害についてをご紹介しました。

弊社では各国法規・各種アセスメントのCAE解析評価を受託しています。車載オリジナル商品の危害性評価についても受け付けているのでぜひ開発にご活用ください。

歩行者の頭部傷害値をについて最適化した事例は>こちら<をご覧ください。
ボディを使用したHIC解析の事例は>こちら<をご覧ください。

最適化を使用した歩行者保護性能向上についてもご相談ください。


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