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フルラップ前面衝突+子供シートベルト無し

この解析ではCCSA様(https://www.ccsa.gmu.edu/)が無償配布している同定済みのMY2015 Camryモデルを使用します。 モデルがアップデートされ、シートが搭載されたためダミーを搭載することができるようになりました。 今回のモデルでは「衝突解析①」同様にLSTC製ダミー(HybridⅢ AM50)を運転席に乗車させ、RR席に同じくLSTC製ダミー(HybridⅢ 6YO)を乗車させています。RR席乗員はシートベルトによる拘束がありません。 解析条件はFMVSS208に則っています。   このモデルでは、簡易的な設定のみでダミーを搭載しているため、実車とは違う結果になっていることをご了承ください。エアバッグ、シートベルト、ステアリングコラムは簡易的なものです。 RR席ダミーは想定していない使用方法のため、ちょっとした工夫が必要でした。接触計算がうまくできずにFR席をすり抜けて運転席ダミーに直接ぶつかるというホラー映画さながらの地獄絵図を作ってしまいました。このアニメーションはRR席ダミーの設定を変更したものになります。   「衝突解析①」と同様に運転席ダミーがシートベルトとエアバッグで拘束されたタイミングで、RR席ダミーが運転席のシートバックに突っ込んできてしまいます。RR席ダミーの脚が折りたたまれるため、この時点では運転席ダミーに大きな被害はありません。(RR席ダミーの脚はこの時点できっと大きな障害値になっていることでしょう・・・) 車両がEAしきり、車両と運転席ダミーが跳ね返ってきたタイミングで、RR席ダミーがFRシートバックに突入します。脚も体も完全に折りたたまれているため、RR席ダミーの持っているエネルギーがすべてFRシートバックに押し込まれます。FRシートバックは、跳ね返ってきた運転席ダミーと突入してくるRR席ダミーに挟まれる格好となり、運転席ダミーとRR席ダミーは互いにぶつかり合うような挙動になってしまいました。 その後、RR席ダミーはまだ運動を止めずにルーフ方向へ跳ね返っていきます。RR席ダミーは致命的な障害値になっていることは言うまでもありません。この間、140msec(0.14秒)しかありません。 人間の能力では自分の持っている運動エネルギーを受け止めることはできません。同乗者がいるときは、必ず全員シートベルトを着用するように声掛けしましょう。   その他のサンプルでは、荷物が固定されていなかったら?他の衝突形態は?車以外では?など、様々なサンプルを追加していく予定です。 また、最適化による衝突性能アップ事例(サイドメンバー、クラッシュボックス、バンパーレインフォースなど)も追加予定です。 弊社では自動車メーカーから、各国の法規評価(FMVSS,UNR…)、各国NCAP評価などを受託しています。お気軽にお問い合わせください。

高速度ポール前突

この解析ではCCSA様(https://www.ccsa.gmu.edu/)が無償配布している同定済みのMY2015 Camryモデルを使用します。ダミーは引き続きLSTC製のHybridⅢ AM50です。 今回のモデルでは「衝突解析事例①」から以下の内容を変更しています。 衝突するバリアを剛体ポール(φ254)に変更 速度を100km/h (!!!) に変更 当たり前ですが該当する法規やアセスメントはありません。 このモデルでは、簡易的な設定のみでダミーを搭載しているため、実車とは違う結果になることをご了承ください。 リジッドバリアで同定されたモデルのため、想定していない衝突形態であり、エアバッグ、シートベルト、ステアリングコラムは簡易的なものです。   明らかに想定外の速度(100km/h)で電信柱にぶつかったところです。 バリアが小さいことと、初期の運動エネルギーがあまりに高いため、ほとんど減速することなくダッシュパネルが侵入してくる結果になっています。キャビンが大きく変形することで乗員の生存空間はどんどんなくなっていき、シートベルトもエアバッグももはや存在意義を感じないレベルの潰れ方になってしまいます。 この解析モデルでは、想定していない速度での衝突のため、コンタクトの貫入などうまく計算できていない部分が多数見られました。LS-Dyna等の動的非線形解析では、有り得ない挙動でもNormal Terminationとなり計算が完了してしまうことがしばしば見られます。 接触計算の不良やエネルギー収支の不整合など、細かく結果をレビューして改善する必要があり、エンジニアの腕の見せ所となります。   今回の結果では、スピード出しすぎは命取りということが強くわかる結果になりました。運動エネルギーの公式を眺めて「速度が2乗で効いてくる」ことはわかっても、実際に乗り物がどのように壊れてしまうのかは中々想像できませんね。昨今の車は操安性が高くスピードを出しても安定していますが、制限速度が設定されている理由をよく考えて安全運転することが大事ですね。   […]

衝突解析②

この解析ではCCSA様(https://www.ccsa.gmu.edu/)が無償配布している同定済みのMY2015 Camryモデルを使用します。 モデルがアップデートされ、シートが搭載されたためダミーを搭載することができるようになりました。 今回、事例紹介「衝突解析①」のモデルからシートベルトを取り外してみました。 解析条件はFMVSS208に則っています。(ベルトが無いため則っていませんね)   簡単に「衝突解析①」をおさらいすると、 エアバッグ:見込み値で作成した簡易的なモデル 結果:ダミーの挙動は不正確ではあるものの、拘束できていることがわかる   今回の結果を見ると、ダミーは自由に前方へ移動するため、明らかに障害値が上がっています。 頭部: エアバッグがカウンターパンチのように乗員の顔面にぶつかっています。 HICがかなり高くなっており致命的です。 胸部: ステアリングに強打するため肋骨の変形量が大きい。 膝部: ダッシュトリムに強打しているため大腿骨荷重が大きい。 足首部: とても痛々しい方向へ曲がっています。 […]

衝突解析①

この解析ではCCSA様(https://www.ccsa.gmu.edu/)が無償配布している同定済みのMY2015 Camryモデルを使用します。 モデルがアップデートされ、シートが搭載されたためダミーを搭載することができるようになりました。 YouTubeでFMVSS208の試験動画を確認することができ、大変よく同定されていることがわかります。 今回のモデルではLSTC製ダミー(HybridⅢ AM50)を乗車させて挙動を確認してみましょう。 解析条件はFMVSS208に則っています。   このモデルでは、簡易的な設定のみでダミーを搭載しているため、実車とは違う結果になっていることをご了承ください。 エアバッグ: 大きさやマスフローレートは見込み値で作成し、ベントはありません。実車よりも少し小さめになっています。折りたたんでハウジングに収めてみましたが、小さいエアバッグの割にハウジングに収めるとギリギリの大きさでした。折りたたみ方だけでも展開速度やスペース効率が変わるため、非常に高度なノウハウが詰まっていることがわかります。 シートベルト: ベルトアンカーのデータが無く、詳細な位置がわからないことや、シートの樹脂トリムが無いため、ベルトパスはやや不自然になっています。 また、プリテンショナーやフォースリミッターは無く、スリップリングのみ設定されたシンプルなシートベルトです。 ステアリングコラム: 衝撃を受けると少しだけ軸平行に移動するようになっています。実車では衝撃吸収機構があるためもっと前方へ移動すると考えられますが、今回のモデルは実車よりも移動量が少なそうに見える状態です。   今回の結果をYouTubeで確認できる結果と比較してみると、車両挙動はとてもよく合致していますが、ダミーの挙動が大きく違うことが確認できます。 しかし、簡易的な設定の解析結果でも、シートベルトで乗員を拘束し、エアバッグが拘束の補助をしていることがよくわかります。 エアバッグは遊園地で配られているバルーンのようで可愛いですね。しかしこれはベントが無いため収縮できず膨らんだままになってしまっています。それにより、ダミーを押し返す挙動になってしまっていることがわかります。 […]

シートベルトアンカーCAE解析

今回の事例は、ECE R14で規定されているシートベルトアンカレッジ強度試験をご紹介します。今回もCCSA様(https://www.ccsa.gmu.edu/)が無償配布している同定済みのMY2015 Camryモデルを使用します。 実車とは違う結果になっていることをご了承ください。 シートベルトに関わるデータは配布データに無く、シートベルトアンカー等は剛体要素で作成しています。ベルトのモデルは基本的な設定とし、1D+2Dのベルトを使用しています。肩とバックルの2か所はスリップリングとし、リトラクターとラップアウターは固定されています。 こちらがLS-Dynaによる解析結果です。無事に最大荷重に耐えることができました。ECE R14に規定されている荷重どおりに入力しましたが、まだまだ余裕がありそうな結果になっています。 側面衝突に耐えるように設計されたBピラーは非常に堅牢で、座屈する兆候が全く見られません。万が一の際にしっかりと乗員を拘束することができる様子がこの解析から理解できます。 通常の開発では、塑性ひずみ・ボディブロック移動量・ベルト荷重など様々なチェック項目がありますがここでは割愛します。 弊社では量産車だけでなく、レース車両の安全装置の解析も受託可能です。FIAから認定を受けているため、弊社に委託していただければFIAのホモロゲーションを取得することが可能です。FIAから認証を受けているのはGRM UKのため認証はUKオフィスに委託することになりますが、すでに日本国内で実績があります。 FIAのベルトアンカー強度評価、ロールバー強度評価などでホモロゲーション取得にお困りでしたらぜひお声がけください。

ブレーキキャリパー製作

今回の事例では、ブレーキキャリパーを最適化した事例をご紹介します。 ブレーキキャリパーはトポロジー最適化ととても相性のいい製品だと感じています。鋳造(鍛造)+切削加工(塊状)の製品だからです。事実、Formula1をはじめNASCAR、WEC、SuperGTなど、トップカテゴリー車両には明らかにトポロジー最適化を活用した形状のキャリパーが使用されています。弊社でもレース用ブレーキキャリパーの開発に参加しており、厳しい要求性能を満足させています。   ここで紹介するモデルは弊社が独自の性能要求を仮定して最適化したキャリパーであり、実際のレースで使用されているものではないことをご了承ください。   最適化結果が上図です。制約条件としては、いくつかの部分の変位を制約しています。3Dプリンターで製作してみたかったので、あえて製造制約条件は付けていません。 また、簡略化するために油路は作らずにモデル化しています。荷重条件は液圧とパッド荷重です。 ここでの変位制約条件は、ドライバーフィーリングに効くと思われる部分の単純な変位量および相対変位、相対角度を制約しています。(具体的な部位は内緒です) 2次元の画像だとわかりづらいですが、かなり挑戦的な肉抜きになりました。3Dプリンターらしいヌメヌメな形状になっています。ちょっと制約条件が尖りすぎていたかもしれませんね。実際の製品開発では、切削加工を前提とした形状制約条件を使うために加工不可部位は出てきません。 実は、性能狙い値によってパッと見は似ていても違う形状が生成されるため、ブレーキメーカー各社で狙い値(性能)が違うことがわかります。過去の製品開発では性能狙い値の水準を振ったら競合他社の双子みたいな形状になりお客様と笑ったことがあります。 せっかくなので金属3Dプリンターで出力してみました。過去の展示会用のため、時間がたちだいぶ汚れてきてしまいました。 最適化結果そのままではなく、CATIA V5を使用して現実的な形状に修正しています。3Dデータ作成は協力企業の株式会社サカモト工芸様に依頼し、油路も作成し、ロゴを入れてもらいました。(実は最適化の際にロゴ用の平面を残す制約条件を入れておいたのです) 3Dデータのレンダリング画像がトップ画像です。もう少しで切削加工で製作できる形状だったので、3Dデータ化の際に切削加工で製作できる形状に修正しています。 3Dプリンターでの出力は協力企業の原田車両設計株式会社様に依頼しています。シリンダー面、パッド当て面および締結部を機械加工すれば本当に実車に搭載できる状態になりました。 こちらは同じ最適化結果をベースに、もっとおとなしい形状にした場合のサンプル形状です。サカモト工芸さんではプロダクトデザインをされているため、とてもかっこよく形状を作っていただけました。レース用キャリパーを見ているとおとなしいですが、乗用車からすると十分過激ですね。   弊社ではCAE最適化だけでなく、コンセプト立案、設計、試作まで一貫して対応することができるため、アイデア(と予算)はあるんだけどどうしたらいいんだろう・・・にお応えします。なんでもお気軽にご相談ください。

フレキシブルウィング

  今回ご紹介する事例では、Formula1などのレースで実際に行われている事例をご紹介します。CAEによる最適化を使用して開発しているフロントのフレキシブルウィングです。みなさんフレキシブルウィングというものをご存じでしょうか? 走行風によるダウンフォースを受けると、ウィングが大きく倒れることで抵抗を低減かつ、グランドエフェクトを増大しダウンフォースを稼ぎながら最高速を上昇させる機能を持ちます。こちらのWebサイトが詳しいです。→https://jp.motorsport.com/f1/news/banned-how-formula-1-outlawed-flexi-wings/4804197/ GRMではこのフレキシブルウィング開発に深く関わってきました。Racecar Engineeringの記事(https://www.racecar-engineering.com/articles/flexible-wings-in-formula-1/)を見ていただければわかるように規制ギリギリの性能を狙っています。(GRMの名前が記事内に出ていますね)   フレキシブルウィングを規制するためにFIAによる剛性試験がルールブックに載りました。ウィングの一部を特定の荷重で押した際の変位量を規制されています。 そこで考えられたのが、「FIAの剛性試験はパスできるが、走行風では大きくたわむ」という性能です。CFRPならではの解決策です。CFRPは異方性材料のため「A部への入力には強く / B部への入力には弱く」という制御をすることができる材料です。目標性能と最適化結果は以下のようになりました。     上記CAE結果のカラーコンターは破壊指数を表示しています。ウィングをたわませるためのクビレ部分に大きな範囲で1.0に近い破壊指数になっていることがわかります。 ・剛性試験での変位:小(FIA基準クリア) ・走行風での変位:大(車両要求を満足) 複数の荷重条件に対してCFRPの積層を設計するのは設計変数が多すぎるため非常に大変(というか不可能)ですが、CAEによる最適化を使用すれば剛性や強度のコントロールが容易です。 下図は最適化前の初期設計状態と、最適化後計状態の変位比較です。最適化後モデルは大きく後傾することがわかります。       […]