次回更新予定の「リアスポイラー本格3D空力解析」に挑む前に、まずは翼断面単体でのポテンシャルを見極めます。GRM Consultingが実践する「確実な設計プロセス」の第一歩、2D CFD解析の検証レポートを公開します。
本事例のトピック:翼断面(2D)CFD解析
- 次回の「車両全体3D解析」への確固たる足場固めとして、代表的な翼型である「NACA 4412」を対象とした2D CFD(二次元流体解析)をLS-DYNA ICFDにて事前実施。
- 時速100km/h・迎角5°の条件下における圧力および流速コンター図を生成。翼下面での流速増加や、スポイラー後端で発生する剥離・渦(乱流)の形成プロセスを可視化。
- 解析で得られた揚力係数(Cl値=0.85)が、Haode Huら(2020)の先行研究データと正確に合致。シミュレーション(CAE)精度の妥当性を証明した実証事例。
使用する翼断面はNACA 4412を選択しました。レース車両やアフターマーケット向けのウィングには様々な翼断面が使用されており、驚きの断面形状になっているウィングもありますね。
【CFD解析の設定】
2D CFD解析の目的と計算条件
いきなりフルビークルの3Dモデルで計算を回すのではなく、まずは「スポイラー単体(翼断面)で、本当に空力的な効果(ダウンフォース)が発生するのか?」という基本原理を事前確認することが、本解析の最大の目的です。
- ソルバー: LS-DYNA ICFD(定常解析)
- 乱流モデル: RANS k-εモデル
- 流速(車速): 100 km/h
- 翼断面前後長: 130 mm
【解析結果】
まずは圧力のコンター図です。スポイラー下面で発生した剥離により、スポイラーの下面から後端に渦が形成されている様子が見られます。
時速100km/hで移動する際の圧力コンター図。5°傾けた配置にしている。
図1に対してカラーレンジを狭くし、翼下側および後方の乱流を見やすくしたもの。
次は流速を確認してみましょう。
翼断面下側の流速が速くなっていることが確認できる。後方の渦の様子が圧力マップよりもわかりやすい。
圧力マップよりも渦が確認しやすいです。翼下側の流速が上昇していることや、後方に渦が発生することなど、先行研究と同じ結果になりました。
参考文献: Haode Hu, Dongli Ma (2020) “Airfoil Aerodynamics in Proximity to Wavy Ground for a Wide Range of Angles of Attack”
今回の条件での結果ではCl値は0.94となり、上記のHaode Huらによる先行研究結果と合致する結果になっています。
次回は、車両まるごとの状態で、スポイラーの有無によりどのような違いがあるかを非定常CFDによって計算した結果を紹介します。おたのしみに。
この記事の監修・執筆チーム
GRM Consulting株式会社 解析エンジニアリング部
モータースポーツ最高峰のF1から量産車開発まで、20年以上にわたり構造設計・衝突・振動・流体解析に携わるスペシャリスト集団。 単なるシミュレーション結果の提示に留まらず、本記事のようなCFDと構造を組み合わせた設計を得意とし、製造要件(鋳造・鍛造・押出成形・板金・CFRP)を考慮した「造れる設計」を提案しています。
- 主要ツール:LS-DYNA, Abaqus, Genesis, Nastran, OptiAssist, Simcenter 3D
- 専門領域:構造最適化、衝撃エネルギー吸収体最適化、CFRP複合材解析、衝突解析、CFD解析
その解析課題、GRMが解決します。
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