円柱の座屈問題をCAE最適化で解決する手法

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円柱の座屈CAE解析結果画像

本事例のトピック:座屈問題のCAE最適化

  • 軽量化とトレードオフになる「座屈(折れ・ペコ付き)」に直面する設計者へ。高精度な座屈シミュレーションおよび座屈解析を活用し、限界まで肉抜きしつつ構造的破綻を防ぐ論理的なアプローチを提示します。
  • 一般的な最適化ツールでは設定が困難な「座屈固有値」を、直接的な制約条件として計算に組み込むことができる、Genesisを用いた高度な座屈のCAE最適化プロセスを解説。
  • 自動車の外板パネルやオフィスチェアから、極限の構造設計が求められるロケットの胴体まで、座屈が支配的な課題となるあらゆる構造物の抜本的な軽量化に応用可能な技術です。

【座屈解析用モデル設定】

今回の事例では、座屈問題を最適化する事例を紹介します。まずは肉厚1mmのパイプを用意しました。入力条件は以下のように、下端を完全拘束、上端はフリーの状態で、上端に圧縮荷重15kNを与えます。

座屈解析用に用意した、肉厚1mmのパイプ形状。SHELL要素で作成したもの。
図1:座屈解析用のメッシュモデル
SHELL要素で作成し、肉厚は1mmとした。表示状態は疑似SOLID表示。
座屈解析モデル。方端を完全拘束し、15kNの圧縮荷重を与える。
図2:座屈解析用の入力条件
片側を完全拘束し、反対側に15kNの圧縮荷重を与えるモデル。

【ベースモデルの解析結果】

ベースラインの解析結果を確認してみましょう。座屈するように荷重を設定したため、座屈固有値がNGになっているはずです。

座屈解析結果。応力は十分低い(200MPa)が、座屈固有値係数が0.71であり、座屈してしまう。
図3:円筒の座屈解析結果
応力は200MPa。座屈固有値係数が0.71となっており、座屈してしまうことがわかる。

線形静解析の結果なので、変位と応力は「座屈が起こらなかったら」という前提になっています。つまり、試験をすると座屈してしまうため、15kNに耐えることができません。

  • 座屈固有値係数:0.71(1.0以下で座屈します)
  • 応力:200.4MPa
  • 最大変位:0.49mm

【座屈問題のCAE最適化モデル】

座屈のCAE最適化条件設定。「座屈考慮あり」「座屈考慮なし」の2パターンを実施。
図4:座屈のCAE最適化条件設定
「座屈を考慮した場合」と「座屈を考慮しない場合」の2パターンを実施。どちらも応力は170MPa以下になるように制約する。

上記のように、座屈考慮有無の2パターンの最適化モデルを用意しました。両方とも板厚の最適化を実施し、結果にどのような差があるかを確認します。応力を低減させることで座屈固有値係数は向上するはずですが・・・。
最適化は、形状は変更せずにパイプの板厚を変更する、板厚最適化(Sizing Optimisation)を使用します。


【座屈を考慮したCAE最適化結果】

座屈のCAE最適化結果。最適化前は1.0mmだった板厚が、1.88mmとなった。座屈を考慮しない場合は、1.29mmである。
図5:座屈のCAE最適化結果比較
最適化前:板厚1.0mm、座屈考慮なし最適化結果:板厚1.29mm、座屈考慮あり最適化結果:板厚1.88mm

最適化後の板厚はこのようになりました。

  • 最適化前:1.0mm
  • 最適化後(座屈考慮無し):1.29mm
  • 最適化後(座屈考慮有り):1.88mm

座屈を考慮することで、パイプ肉厚が厚くなる結果となっています。

【座屈考慮なしの確認計算結果】

座屈を考慮せずに最適化した場合の確認計算結果。応力目標は満足しているが、座屈固有値係数が0.92であり、座屈してしまう。
図6:座屈考慮なし 最適化後確認計算結果
応力目標(170MPa以下)は満足しているが、座屈固有値係数が0.92であり、座屈してしまう。

応力は十分に低減させられましたが、座屈固有値係数が1.0を下回るため、座屈してしまうことがわかります。

【座屈考慮ありの確認計算結果】

座屈を考慮して最適化した場合の確認計算結果。応力目標は満足しつつ、座屈固有値係数が1.33まで向上している。
図7:座屈考慮あり 最適化後確認計算結果
応力目標(170MPa以下)を満足し、座屈固有値係数が1.33であり、目標値を満足した。

座屈固有値係数を制約条件に追加したパターン②のモデルでは、制約条件どおりに座屈固有値係数≧1.3を守った結果になりました。いずれの解析結果も、片側自由端の机上計算値と合致していることも確認できました。


【座屈を制約するCAE最適化の使いどころ】

円錐殻やドーム形状の座屈CAE解析モデル
図8:円錐殻の座屈CAE解析モデル
座屈固有値の制約条件は形状に依らず、円錐殻・ドーム形状・柱など様々な形状に利用することができる。ロケットの円筒部やフェアリングなどでも利用が可能。

座屈固有値を考慮した最適化は、円柱の圧縮座屈に限らず上記のような円錐殻の座屈にも使用することができます。別の事例で紹介している、CFRP製椅子の開発でも利用されました。

ただし、以下図に示す、所謂パネルデントと呼ばれるような面の座屈については、座屈前の変形状態が再現できていないと線形静解析ソルバーでは正しく座屈荷重を予測できません。そのため、LS-Dyna等の非線形解析ソルバーと組み合わせた最適化が必要になります。非線形ソルバーとの連携では、押込み荷重の耐座屈性能や、風圧の耐座屈性能の最適化実績があります。

線形静解析ソルバーの固有値計算を元にした座屈性能確認だけでは、初期形状の不整(形状バラツキ・荷重の偏り)や、座屈前の変形による座屈荷重の低下を見落としてしまうため、最適化をしながら随時LS-DYNA等で性能確認をしています。

パネルデント解析。自動車外板の押し込み解析。
図9:外板の押し込みによる座屈解析モデル
パネルデントなどと呼ばれる押し込み剛性の解析モデル。LS-DYNAとリンクさせることにより、GENESISで最適化することが可能。

今回は一般的な変形や強度だけでなく、座屈についても同時に最適化を実行できることを紹介しました。今後も様々なサンプルを紹介予定です。

LS-DYNAとGENESISの連成による最適化はこちら(非線形動的課題の最適化事例)をご確認ください。

弊社ではCAE解析による評価だけではなく、設計も受託しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

その解析課題、GRMが解決します。

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この記事の監修・執筆チーム

GRM Consulting株式会社 解析エンジニアリング部

モータースポーツ最高峰のF1から量産車開発まで、20年以上にわたり構造設計・衝突・振動・流体解析に携わるスペシャリスト集団。 単なるシミュレーション結果の提示に留まらず、本記事のような座屈問題がかかわる製品設計を得意とし、性能目標の達成から軽量化まで様々な改善を手掛けています。

  • 主要ツール:LS-DYNA, Abaqus, Genesis, Nastran, OptiAssist, Simcenter 3D
  • 専門領域:構造最適化、衝撃エネルギー吸収体最適化、CFRP複合材解析、衝突解析、CFD解析