受託解析事例 - LS-DYNAによるガラスの衝撃破壊解析

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ガラス衝撃解析のサムネ

本事例のトピック

  • 自動車のフロントウィンドウ(ウインドシールド)等に使用される「合わせガラス(Laminated Glass)」に対し、剛体インパクタを衝突させた際の破壊挙動をLS-DYNAを用いて解析
  • ガラス層の脆性破壊(クラック進展)と、中間膜(PVB等)の大変形・エネルギー吸収という異なる物理現象を同時にシミュレーションし、飛散防止機能や耐貫通性能を評価
  • 本解析手法は、JIS R 3212等の安全性試験の再現や、歩行者頭部保護(HIC)解析におけるガラスの衝撃吸収特性の同定(マテリアルモデル構築)に応用可能

今回はLS-DYNAによる衝突解析受託事例として、合わせガラスの衝撃解析を紹介します。

自動車のフロントウィンドウ(ウインドシールド)は樹脂の中間層を使用した3層合わせガラス(ラミネートガラス)が一般的で、歩行者保護性能が求められます。この合わせガラスを精度よくLS-DYNAで評価します。

技術解説:合わせガラス(Laminated Glass)の構造とCAE

合わせガラスとは、2枚のガラス板の間に強靭な樹脂膜(中間膜)を挟み込み、加熱圧着した安全ガラスのことです。主に自動車のフロントウィンドウ(ウィンドシールド)に使用されます。

主な構成要素と役割:

  • ガラス層(Outer/Inner):視界を確保し、風圧や飛来物に耐える剛性を持つが、衝撃を受けると瞬時にひび割れる(脆性破壊)。
  • 中間膜(Interlayer):一般的にPVB(ポリビニルブチラール)等の樹脂が用いられる。ガラスが割れた際に破片を吸着して飛散を防ぐとともに、膜自体が伸びることで衝撃エネルギーを吸収し、物体の貫通を阻止する。

CAE解析のポイント:
この「割れるガラス」と「伸びる膜」という極端に異なる挙動を正確に再現するために、積層したシェル要素や積層ソリッド要素、SPH(粒子法)、あるいはエレメント・デリーション(要素消滅)機能を、適切に組み合わせた高度なモデリング技術(LS-DYNA等)が必要となります。

使用するモデルはフロントウィンドウのみで、HIC解析用のインパクターを使用して衝撃解析を実施します。引張/圧縮や曲げなどの基礎試験を模擬しても全く面白くない結果になるため、HICの事例と被りますがご容赦ください。

  1. CCSA様配布のMY2015 Camryから流用したラミネートガラス
  2. GRMにて過去にMATカードを作成したラミネートガラス(乗用車用では無いもの)

上記の2パターンにて、ガラスの衝撃解析をLS-DYNAで実行します。

LS-Dynaによるガラスの衝撃解析結果。同定したモデルの方が強い。
図1:LS-Dynaによるガラスの衝撃解析結果
左:前突解析用の簡易的なガラスモデル。右:物性値取得試験から同定された高度なガラスモデル。あきらかに破壊挙動が異なる。
同定されたモデルではピークHIC値が低下し、長い時間をかけてエネルギー吸収している。

左がCCSAのCamryモデルから流用した結果です。ただし、前突用モデルであり、ガラスについては正しく同定されているか不明です。(たぶんされていません)
右が弊社で過去に作成したMATカードを使用したモデルの結果です。乗用車用では無いことに注意が必要です。
いずれの結果も、HICは十分に低い値になっており、値だけで見れば大きな差はありません。Camryのモデルは粉々になっているように見えます。ここで衝撃によるガラスの亀裂の様子を見てみましょう。

LS-Dynaによるガラスの衝撃解析結果。亀裂進展の様子が見られる。
図2:LS-Dynaによるガラスの衝撃解析結果 亀裂進展の様子
左:前突解析用の簡易的なガラスモデル。右:物性値取得試験から同定された高度なガラスモデル。
簡易モデルではガラスが脆弱すぎるように感じられる。それに対して同定されたモデルは大型車用ガラスのため、亀裂が少なすぎる印象。

紫になっている部分はガラスが破断して要素が無くなる部分です。ガラスの亀裂進展が双方に見られます。Camry流用モデルはほとんどフィルムのみで耐えている状態でした。弊社MATカードのモデルは乗用車には少し強すぎるようにも見えます。(亀裂が少ない)
この違いは、インパクター加速度のピークにもしっかりと見ることができます。

ガラスの衝撃試験と、バスのウィンドシールドの衝撃破壊の様子
図3左:ガラスの衝撃試験 図3右:バスのウィンドシールドの衝撃破壊の様子
GRMでは「ガラスの基礎試験実施~MATカードの作成~車両状態での解析」を一貫して受託しています。

弊社では、材料試験からMATカード作成までを一貫して請け負うことで、正確なCAE結果をお届けしています。もちろん、お客様から支給された試験結果からもMATカードの作成が可能です。
正しいCAE結果を得るために、正しく一貫性のある試験結果と、正しいMATカードを作成することが重要です。


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この記事の監修・執筆チーム

GRM Consulting株式会社 解析エンジニアリング部

モータースポーツ最高峰のF1から量産車開発まで、20年以上にわたり構造設計・衝突・振動・流体解析に携わるスペシャリスト集団。 単なるシミュレーション結果の提示に留まらず、本記事のような安全性能のアセスメント評価を得意とし、性能目標の達成から軽量化まで様々な改善を手掛けています。

  • 主要ツール:LS-DYNA, Abaqus, Genesis, Nastran, OptiAssist, Simcenter 3D
  • 専門領域:構造最適化、衝撃エネルギー吸収体最適化、CFRP複合材解析、衝突解析、CFD解析