リアスポイラーは本当に効く?CFD解析で見るダウンフォースの効果

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CFD解析によりNACA4412翼断面を用いたリアスポイラーのダウンフォース効果を確認する。

本記事のトピック:リアスポイラーの空力効果(CFD検証)

  • 自動車の空力パーツとして代表的な「リアスポイラー」の装着効果を、LS-Dyna ICFDを用いた非定常解析(CFD)により可視化・検証します。
  • NACA4412翼断面を用いたスポイラーの有無による、車体後方の乱流の抑制(整流効果)や、圧力分布の変化を流速・圧力アニメーションで詳細に比較。
  • 空気抵抗(ドラッグ)の増加という代償を払いながらも、車体を路面に押し付けるマイナス揚力(ダウンフォース)をいかに獲得するか、その空力的トレードオフを解説します。

【CFD解析モデル:リアスポイラー検証モデル】

今回は2DCFDによる翼断面の流体解析モデルに引き続き、リアスポイラーの効果を車両モデルで検証します。用意したのは以下の2パターンのモデルです。
さんざん遊んだロードスターのモデルから、シビック(FN2)にしています。こちらのモデルは、ゲーム用のポリゴンデータを購入したものであり、実車データとは異なります。そのため、解析結果は正確とは言えないことに注意してください。

リアスポイラーありのモデルに装着されているスポイラーは、翼断面CFDのものと同サイズです。

リアスポイラーの空力検証のために用意したスポイラーありとなしを再現したシビック
図1:リアスポイラー空力効果検証モデル
左:リアスポイラーなし。右:リアスポイラーあり。スポイラーはNACA4412翼断面を使用している。
リアスポイラーの空力検証のために用意したスポイラーありとなしを再現したシビック。ボトム側は形状省略しフラットボトムにしている。
図2:リアスポイラー空力効果検証モデル – 底面
どちらのモデルも車両底面は形状を簡略化し、フラットボトムの状態で解析する。。
 

【解析条件】

  • ソルバー:LS-Dyna ICFD
  • 解析タイプ:非定常解析
  • 乱流モデル:VMS-LES
  • 流体速度:100km/h
  • トンネルサイズ:DriVaerモデルと同様
  • その他設定:タイや回転なし / 流体物性は標準値を使用

【CFD解析結果:リアスポイラーの効果検証】

まずはアニメーションで2つのモデルを確認してみます。流速と圧力をそれぞれ確認します。

リアスポイラーの空力検証CFD解析結果を流速で比較したアニメーション。
図3:リアスポイラー空力効果検証結果 – 流速比較
上:リアスポイラーなし。下:リアスポイラーあり。ルーフ後端の剥離は変化が見られないが、剥離後の流れに明らかな違いが見られる。
リアスポイラーの空力検証CFD解析結果を圧力で比較したアニメーション。
図4:リアスポイラー空力効果検証結果 – 圧力比較
上:リアスポイラーなし。下:リアスポイラーあり。ルーフ後端の剥離は変化が見られないが、剥離後の流れに明らかな違いが見られる。
スポイラー上面に正圧、下面に負圧が発生していることがはっきりと確認できる。

リアスポイラー周りの流れをCFD解析により可視化することで、リアスポイラーには確実に効果がありそうだということが上記のアニメーションから理解できました。

次に、Cd値とCl値について確認した結果が以下です。実車データではないため絶対値は伏せます。(余談ですが別記事のオープンカーよりかなり優秀です)

本事例のトピック:リアスポイラー装着による空力特性の変化(CFD検証)

  • ベースモデルの形状依存を避けるため、本検証では絶対値ではなく、モータースポーツの空力開発で標準的に用いられる「カウント(1カウント=0.001)」「Δ(変化量)」を用いてスポイラーの空力効果を評価します。
  • 空気抵抗係数(Cd値)は、リアスポイラーの装着によりΔCd = +15カウント増加しました。これは、車体を路面に押し付ける力を獲得するための、空力学的なトレードオフ(代償)を示しています。
  • 一方で揚力係数(Cl値)は、ΔCl = -15カウントと大きなな改善を見せました。これにより車体は、僅かに浮き上がるリフト状態から、マイナス揚力(ダウンフォース)を確実に発生させる状態へとシフトしており、追加したドラッグ(抵抗)を相殺して余りある空力効率の最適化が確認できます。

リアスポイラーの効果検証CFD解析結果。流速線の表示。リアスポイラーによりルーフ後端から先の流れが変化していることがわかる。リアウィンドウに見られる乱流が少し低減する清流効果も確認できる。
図5:リアスポイラー空力効果検証結果 – 流速線比較
左:リアスポイラーなし。右:リアスポイラーあり。
流速線を表示。リアスポイラーによりルーフ後端から先の流れが変化していることがわかる。リアウィンドウに見られる乱流が少し低減する清流効果も確認できる。
リアスポイラーの効果検証CFD解析結果。Q値ISOサーフェスの表示。大きな違いは見られないが、流速線表示で見られたリアウィンドウの乱流が低減され、整流効果が確認できる。
図6:リアスポイラー空力効果検証結果 – Q値比較
左:リアスポイラーなし。右:リアスポイラーあり。
Q値ISOサーフェスを表示。大きな違いは見られないが、流速線表示で見られたリアウィンドウの乱流が低減され、整流効果が確認できる。

今回の解析では、車体サイズに対して前後長がとても短いリアスポイラーを使用して検証したため、大きな差が見られるか少し不安でした。しかし、このスポイラーによりダウンフォースが発生し、わずかに発生していた揚力(リフト)が削減されマイナス揚力(ダウンフォース)効果があることが確認できました。時速100kmでの解析としているため、高速道路での走行中、特にレーンチェンジなどで体感できるものだと感じます。販売されている社外品のリアスポイラーはもっと大きなものが多いようなので、公道でも合法の範囲で十分走行性能向上を体感できる製品と言えるのではないでしょうか。(車検適合品を選択しましょうね!絶対!)

ところで、オープン状態の車両では車両後端部は凄まじい乱流場になっていましたね。そこにリアスポイラーを置くとどうなるんでしょうね・・・?

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この記事の監修・執筆チーム

GRM Consulting株式会社 解析エンジニアリング部

モータースポーツ最高峰のF1から量産車開発まで、20年以上にわたり構造設計・衝突・振動・流体解析に携わるスペシャリスト集団。 単なるシミュレーション結果の提示に留まらず、本記事のようなCFD解析による改善を得意とし、製造要件(鋳造・鍛造・押出成形・板金・CFRP)を考慮した「造れる設計」を提案しています。

  • 主要ツール:LS-DYNA, Abaqus, Genesis, Nastran, OptiAssist, Simcenter 3D
  • 専門領域:構造最適化、衝撃エネルギー吸収体最適化、CFRP複合材解析、衝突解析、CFD解析