今回の事例では、柱の座屈問題を最適化した事例でも少し触れた、円錐殻の座屈について紹介します。
使用するモデルは以下のようなモデルです。

軸方向荷重と、軸直交方向荷重を与えます。軸直交方向荷重は、軸方向荷重の1/10の大きさです。コーン(円錐殻)の上辺をSPCで拘束しています。早速、座屈固有値を確認してみましょう。
使用するソルバーはGenesis2024.1を使用し、線形静解析で座屈固有値係数を求めます。

座屈固有値係数は0.6でした。入力荷重の60%程度で座屈してしまうことがわかります。
ここから、座屈固有値係数を1.2になるように最適化していきます。今回の最適化では、コーン(円錐殻)の板厚をトポメトリー(Topometry)最適化で変更します。トポメトリー最適化では、任意の分割指定に合わせて、部分部分で板厚を変更する最適化です。CFRPなどの板厚可変が容易な製品では一般的な最適化手法です。トポロジー最適化も組み合わせて、Solid形状による補強や穴あけも同時に検討できますが、今回は割愛します。

最適化後の板厚分布マップが上図となります。最大板厚は1.8mm、最小板厚は1.3mmです。トポメトリー最適化の設定で、円周方向に板厚一定になるように指定したため、旋盤加工で製作できる板厚分布になっています。デモ用モデルのためメッシュが粗く、板厚分布がスムーズではありませんがデモモデルのためご容赦ください。円柱や円錐形状では、メッシュサイズやメッシュ分布が座屈に対して敏感なため、実際の製品設計では気を遣う部分になります。
トポメトリー最適化による板厚変化は、今回の円周方向に一定以外にも、放射状の板厚分布にしたりランダムな板厚分布にしたりユーザーが自由に指定することが可能です。
また、この板厚はコーンの最外形をキープしたまま、コーンの内側に向かって板厚が増えるように設定されています。そのため、板厚を付与した3Dデータを作成すると、コーンの外側は一定面となり、内側は凹凸のある形状になります。
最適化後モデルのコーンの座屈固有値係数は制約条件どおり、1.2となりました。以下が最適化後の座屈CAE解析結果です。(あまり変わり映えしませんね)

せっかくなので、こちらのモデルを使用して、LS-Dynaで座屈の様子を確認してみましょう。入力条件としてはImplicitソルバーを使用した方がいいのですが、今回はあくまで座屈の様子が見たいためExplicitを使用しています。

最大荷重に至った瞬間、コーン表面に凹凸が現れ、大きな変形をします。線形静解析ではよくわからない座屈モードの様子が確認できました。
今回は取り扱いませんが、殻の座屈問題は形状初期不整などの所謂バラツキに敏感であり、大きく座屈荷重が変化してしまうため、実務では注意が必要です。
また、最適化初期状態(Cycle0)の状態によっても最適化結果が大きく変化するためこちらも注意が必要です。
- 別の事例で紹介する、MultiRunという機能を使用しています。
- 殻の座屈や、CFRPの積層設計など、初期状態に敏感な課題で。MultiRunが活躍します。
そのうち、ドーム状の形状に対する圧力解析でも実施してみる予定です。
- 不定形状の圧力容器
- 高速走行時の風圧による、外装パネルの座屈
