CAE用フィラメントワインディングツールによるPCOMPGプロパティの作成

CAE用にフィラメントワインディングのモデル化したもの。タンク形状や異形断面、曲げパイプに対応できる。

本事例のトピック

  • 高圧タンクやドライブシャフト/プロペラシャフト等の回転体構造製品に用いられるフィラメントワインディング(FW)法について、製造要件を考慮したCAEモデリング手法を提示
  • GRM製ツール「OptiAssist」のFWモデラー機能を使用し、ヘリカル巻きインプレーン巻き等の複雑なワインディングパターンにおける配向角・積層厚を自動計算
  • 計算された積層情報は汎用的なPCOMPG(積層シェル要素)として出力され、GENESISやNastran等を用いた構造解析・振動解析・内圧解析とシームレスに連携可能

今回はCFRP製品の受託解析事例として、フィラメントワインディングを想定した積層定義を簡単に作成できるツールをご紹介します。このフィラメントワインディングモデル作成ツールは、弊社が販売しているGenesis向けOptiAssistにある機能で、作成したPCOMPGプロパティを.dat形式で出力できるため、NastranやLS-Dynaなど他のソルバーでも計算可能です。


フィラメントワインディング(FW:Filament winding)とは

炭素繊維(CF:Carbon Fibre)やガラス繊維(GF:Glass Fibre)などの強化繊維束に樹脂を含浸させながら、回転するマンドレル(芯金)に張力をかけて巻き付けていくFRP(繊維強化樹脂)成形法の一つです。

主な特徴と適用製品:

  • 適用形状:パイプ、シャフト、圧力容器(水素タンク等)などの回転体または閉断面構造に適しています。
  • 工学的メリット:ワインディング角度や積層厚を連続的に変化させることが可能なため設計自由度が高く、かつ繊維を切断せずに連続した状態で成形できるため、極めて高い比強度と信頼性を実現できます。

【フィラメントワインディングツールでのPCOMPG作成】

フィラメントワインディングツールを使用して積層定義したPCOMPG。巻き角度によってPCOMPGのプロパティ適用範囲が変化している。
図1:フィラメントワインディングツールを使用して積層定義したPCOMPG
-30/30°、-45/45°、-60/60°の3パターンを比較。巻き角度によってPCOMPGのプロパティ適用範囲が変化している。

こちらがフィラメントワインディングツールを使用して積層定義したPCOMPGです。定義した巻き角度によってPCOMPGの範囲が変化しています。-45/45°積層を詳しく見ると以下のようになっています。

フィラメントワインディング45°積層のヘリカル巻きのPCOMPGを作成したCAEモデル。
図2:フィラメントワインディング45°積層のヘリカル巻き
45°積層のフィラメントワインディング積層を正しく再現したPCOMPG。-45/45と45/-45の積層によりPCOMPGが分かれている。

一般的なPCOMPGで積層定義定義してしまうと、管全体が -45/45 or 45/-45 の積層になってしまいますが、フィラメントワインディングツールを使用することで -45/45の範囲と45/-45の範囲を分けて積層定義したPCOMPG作成をすることができます。単純な一定巻き角度であればあまり大きな問題にはなりませんが、巻き角度を変化させてワインディングさせると以下のようになります。

一般的な積層定義のPCOMPGとフィラメントワインディングを定義したPCOMPGの比較
図3:一般的な積層定義のPCOMPGとフィラメントワインディングを定義したPCOMPGの比較
どちらも積層の数は同じで、使用している繊維配向は同じ。フィラメントワインディングツールでは要素ごとに正しく積層順を定義するため、多数のPCOMPGが自動生成される。

フィラメントワインディングを再現したPCOMPGのモデルでは、色分けされている部分ごとに積層の定義(積層の順番)が違い、8つの異なるPCOMPGプロパティになりました。(作成されるフィラメントワインディングプロパティ数は、テープ幅や巻き角度により変化します)


【特殊断面や特殊形状でのフィラメントワインディングプロパティ作成】

フィラメントワインディングツールでは、単純な一定断面のパイプだけでなく、異形断面のフィラメントワインディングや、曲げパイプにも対応可能です。(曲がっているパイプ形状は、脱芯後の曲げを想定しています)

CAE用にフィラメントワインディングをモデル化したもの。タンク形状や異形断面、曲げパイプに対応できる。
図4:CAE用にフィラメントワインディングをモデル化したもの
一定断面パイプ、タンク形状、断面変化のある異形断面パイプ、曲げたパイプ形状など、様々な形状に対してPCOMPGプロパティ作成ができる。

異形断面や曲げたもののフィラメントワインディングでは、狙いが45°のヘリカル巻きでもマンドレル形状によっては部分的に積層の角度が変わります。

下の画像(図5)は、フィラメントワインディングパイプを屈曲させた部分の積層の様子です。

CFRP製品受託設計。屈曲したパイプ形状でもワイディング角度が変化している状態を正しくPCOMPGプロパティで再現している。
図5:屈曲させたパイプに適用したフィラメントワイディングPCOMPGプロパティ
屈曲したパイプ形状でもワイディング角度が変化している状態を正しくPCOMPGプロパティで再現している。曲げ内R側では積層角度が深くなり、外R側では積層角度が浅くなる。

フィラメントワインディングツールを使用して積層定義を作成すると、曲率に合わせて自動的にワインディング角度を計算するため、上図のように曲げ内側と外側で違うPCOMPGプロパティを作成します。手作業での積層定義は実質不可能であり、専用ツールでしか正しくプロパティ定義をすることができません。


【フィラメントワインディングPCOMPGでの解析】

フィラメントワインディングを定義したPCOMPGモデルと、一般的なPCOMPGモデルでは、CAE解析結果は変化するのでしょうか?実際に解析を実行して違いを確認してみましょう。どちらも積層数(板厚)と積層角度は同じモデルで、カラーコンターは破壊指数を表します。

フィラメントワインディングの強度評価結果。FWツールを使用したものはPCOMPG境界部で破壊指数が高くなっており、破壊指数が正しく評価できる。
図6:破壊指数によるFWパイプの強度評価結果
上図:FWツールを使用した場合の破壊指数。PCOMPGの境界部で高い破壊指数が見られる。
下図:一般的なPCOMPGの破壊指数。FWモデルでは見られる応力集中が見られない。
CFRP製品受託解析。フィラメントワインディングで積層したものの破壊指数比較
図7:一般的なPCOMPGとFWツールPCOMPGの比較 - 高い破壊指数部分のアップ
最大破壊指数となる部位はどちらも同じだが、FWモデルではPCOMPG境界部に高い破壊指数が見られ、正しく評価できていることがわかる。

比較項目 一般的なPCOMPG定義
(簡易モデル化)
OptiAssist FWモデラー
(詳細FWモデル化)
実際のFW製品
積層構成
(Stacking Sequence)
管体全体で「一定の積層構成」として定義される。
(例: [45/-45/90/0])
場所(要素)ごとに積層の順番や厚みが変化し、実際のワインディングプロセスを再現する。 ワインディングの軌跡により、場所ごとに積層順序が異なる。
複雑形状への追従
(Geometry Following)
曲管や断面変化部においても、常に一定の繊維角度として扱われることが多い。 曲げ部や断面変化に合わせて、幾何学的に正しい「繊維配向の変化」を自動計算する。 マンドレル形状に沿って繊維が巻かれるため、局所的に配向角が変化する。
解析結果の再現性
(Stress Correlation)
積層変化に起因する局所的な応力集中が発生せず、強度評価が危険側(過小評価)になりやすい。 積層順の切り替わり部(PCOMPG境界)で発生する特有の応力集中を忠実に再現できる。 積層の不連続部や折り返し部において応力集中が発生する。


このフィラメントワインディングツールで作成したモデルで、Nastran、Genesis、LS-Dynaで過去に評価していますが、いずれのモデルも実試験と十分な相関を得ることができました。もちろん、PCOMPGで作成しているためこのまま積層を最適化することができます。

今回は、フィラメントワインディングのような複雑な構成となる積層をモデル化するツールを紹介しました。CFRPやGFRPなどの複合材を解析する際にお困りのことがあれば何でもお気軽にお問い合わせください。


その解析課題、GRMが解決します。

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この記事の監修・執筆チーム

GRM Consulting株式会社 解析エンジニアリング部&ソフト開発部

モータースポーツ最高峰のF1から量産車開発まで、20年以上にわたり構造設計・衝突・振動・流体解析に携わるスペシャリスト集団。
構造解析やCAE最適化設計の受託に留まらず、現在の技術では達成できない課題を、ソフトウェアを自作してでも目標達成するマニアック集団でもある。

  • 主要ツール:LS-DYNA, Abaqus, Genesis, Nastran, OptiAssist, Simcenter 3D
  • 専門領域:構造最適化、衝撃エネルギー吸収体最適化、CFRP複合材解析、衝突解析、CFD解析
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