オープンカーの空力/CFD解析 — 屋根開閉による空気抵抗(Cd値)と乱流の違い

今回の事例では、NAロードスターのモデルを使用して、CFD解析によりオープンカーのオープン状態とクローズ状態の空気抵抗(Cd値)、乱流の様子を比較をしてみます。使用するソルバーは前回同様、LS-DYNAのICFDを使用し、乱流モデルはVMS-LESとします。基本的な設定は全て統一しているため、単純にオープン状態とクローズ状態の比較となります。

タイヤの回転がなかったり車体下面が完全フラットだったりと、実車とは違う条件になっているため、絶対値比較ではなく相対値比較となることをご容赦ください。解析の諸条件については、ウィンドディフレクターの効果検証のページをご確認ください。

CFDで性能比較するためのオープンボディオープンボディとクローズボディの状態

上記の状態の2種類のボディを用意しました。左側は前回同様のオープン状態のボディで、右側はハードトップを装着した状態のボディです。

それでは、さっそく、オープンカーのオープン状態とクローズ状態での違いを検証していきましょう。まず初めに、流速を確認してみましょう。

オープンカーのオープン状態とクローズ状態のCFD解析による流速比較

オープンカーのセンター断面:CFDによる流速比較

では、次に圧力を確認してみましょう。

オープンカーのオープン状態とクローズ状態のCFD解析による流体圧力比較

オープンカーのセンター断面:CFDによる流速比較

2つの結果を比較すると、ウィンドシールド後端の剥離による乱流が無くなったことにより、クローズ状態の方が車体後側の乱流が低減されていることがわかります。クローズ状態ではルーフ後端で剥離による乱流が見られ、ファストバックスタイルではない車両でよく見られる現象です。

オープンカーのルーフ開け閉めによるCd値の違いを比較したグラフ

NAロードスターのオープン状態とクローズ状態のCd値を比較してみました。詳細なモデルではないため、絶対値ではなく指数で比較します。オープン状態を100とした場合、クローズ状態では80となっています。幌(ハードトップ)を閉めると、20%の差があることがわかりました。クローズ状態の方が圧倒的に空力特性に優れていると言えそうです。
Cd値の低下により燃費にも影響がありそうですが、オープンカー乗りの方は気にしないでしょうね。

せっかくなのでQ値で作成したISOサーフェスを確認して乱流が大きい部分を見てみましょう。ISOサーフェスのカラーコンターは流速を表しています。

オープンカーの開閉状態それぞれのQ値ISOサーフェス比較画像

オープン状態ではウィンドシールド後端からの乱流が車両後方まで影響を及ぼしていることが一目でわかります。リアスポイラーをつけるのであれば、必ず幌は閉めた方がよさそうですね。

弊社では構造解析/最適化設計以外にも様々な受託をしています。スポイラーの効果検証など、是非お気軽にお問い合わせください。