About This Case Study
本記事は、GRMユーザーカンファレンス(2023)にて発表された講演資料を基に、Polestar社が取り組む「Polestar 0 プロジェクト」におけるCAE最適化とライフサイクルアセスメント(LCA)の融合について要約・解説したものです。
- テーマ: The Zero Concept – A complete supply chain solution to CO2e
- 発表者: Mike Cromarty 氏(Polestar)
2030年「真の気候中立(クライメイト・ニュートラル)車」実現に向けたPolestarの挑戦
現在の自動車産業は、地球温暖化を1.5度に抑えるという目標に対して大幅に遅れをとっており、このままでは2035年までにCO2e(二酸化炭素換算)の許容予算を完全に使い果たすと予測されています。この危機的な状況に対し、Polestar社は「2030年までに真の気候中立車を創出する」という野心的な目標を掲げ、Polestar 0 プロジェクトを立ち上げました。
このプロジェクトの目的は、単に走行時の排出ガスをなくすことではありません。原材料の採掘から材料製造、製品の組み立て、そして使用後の廃棄(End of life)に至るまで、サプライチェーン全体のあらゆる段階において温室効果ガス(GHG)排出をゼロにすることを目指しています。
0 Wing プロジェクト:LCAとCAE最適化の融合
完全なゼロCO2e製品開発の課題を具体的に探るため、Polestarは内装部品の代表例として「0 Wing」と呼ばれるコンポーネントのプロジェクトを開始しました。ここで重要となるのが、複数の代替材料を用いた際の環境負荷と構造性能のバランスをどのように評価するかという点です。
この課題に対し、GRM Consultingは構造解析および高度な最適化手法を提供しました。アルミニウム、マグネシウムといった金属材料から、ポリカーボネートやアクリルなどの樹脂材料、さらには天然繊維を用いた複合材まで、多岐にわたる材料特性に合わせてRDM(Reinforcement Derivation Method)やトポロジー最適化、寸法・板厚最適化(Gauge / Sizing)を実施しました。
【解説コラム】材料選定における「最適化」の真の意義
単純に「環境に配慮した材料」へ置き換えるだけでは、十分な剛性や強度を確保するために部品が重くなり、結果としてライフサイクル全体での環境負荷が悪化する可能性があります。
GRMが介入し、各材料の特性に応じた最適な構造(最小限の材料使用量で性能要件を満たす形状)を導き出すことで、初めてLife Cycle Assessment(LCA)における公平かつ正確な「バックトゥバックの比較」が可能になります。
各材料での質量剛性比をCAE最適化によりケーススタディすることで、短時間で適切な材料を選定することが可能です。
各材料の特性に応じたアプローチと設計検証
初期のベンチマークテストにおいて、剛性対重量比(周波数/質量)を評価した結果、マグネシウムやアルミニウムが高いポテンシャルを示す一方で、天然繊維はベースラインのプラスチックよりも重くなる傾向が見られました。しかし、最適化技術を適用することで、これらの材料の欠点を補い、性能を引き出すことが可能です。
最終的に、以下の3つの特徴的な設計案が抽出・検証されました。
| 採用材料と構造 | 設計の特徴と結果 |
|---|---|
|
アルミニウム (骨格構造) |
トポロジー最適化を活用し、0.8mm厚のスケルトン構造を導出。質量はベースラインより増加(407g)したものの、性能面で大幅な向上が見られ、かつリサイクル性が非常に高いというメリットがあります。 |
|
アクリル (モノマテリアル) |
単一素材(モノマテリアル)によるソリューション。2.4mm厚の構造で、ベースライン設計と比較して質量の削減(317g)と性能向上の両立を達成しました。 |
|
天然繊維 #2 (一定厚) |
製造要件による制約(一定厚の必要性)を考慮し、1.4mm厚で設計。3つの候補の中で最も軽量(296g)であり、かつベースラインの汎用プラスチックよりも優れた性能を示しました。 |
まとめ:持続可能なモノづくりとCAEの価値
本プロジェクトにおいて、GRMが提供した最適化データはPolestar独自のLCAに組み込まれました。最適化シミュレーションの結果を用いることで、材料、構造、そして組み立ての複雑さのバランスを緻密に計算し、ベースラインのアセンブリと比較して、最も優れたシナリオでは最大72%のCO2e削減が予測されています。
次世代の自動車開発において、サステナビリティ(持続可能性)と製品パフォーマンスはもはやトレードオフの関係ではありません。高度なCAE最適化を活用することで、未踏の材料のポテンシャルを最大限に引き出し、CO2削減と高性能化を同時に達成することが可能なのです。
その解析課題、GRMが解決します。
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「現状のモデルを見てほしい」「テスト解析を依頼したい」など、技術的なご相談からでも大歓迎です。
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※技術のご相談は各事例モデルの解析担当者に対応させます。
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この記事の監修・執筆チーム
GRM Consulting株式会社 解析エンジニアリング部
モータースポーツ最高峰のF1から量産車開発まで、20年以上にわたり構造設計・衝突・振動・流体解析に携わるスペシャリスト集団。 単なるシミュレーション結果の提示に留まらず、本記事のようなCAE最適化設計を活かした設計を得意とし、製造要件(鋳造・鍛造・押出成形・板金・CFRP)を考慮した「造れる設計」を提案しています。
- 主要ツール:LS-DYNA, Abaqus, Genesis, Nastran, OptiAssist, Simcenter 3D
- 専門領域:構造最適化、衝撃エネルギー吸収体最適化、CFRP複合材解析、衝突解析、CFD解析
